「汎用FPGAの空白を埋める」、Efinixの成長戦略を聞く:CEO独占インタビュー(5/5 ページ)
FPGAはかつては2社が独占していたが、現在は60億米ドルを超えるFPGA市場のさまざまな隙間を埋めようとする企業が数多く存在する。そうした企業の1つで、近くナスダック上場も計画する成長企業EfinixのCEOに、米国EE Timesが独占インタビューを行った。
産業向けから、「瞬く間に複数の分野へと拡大する」
――顧客企業がEfinix製品に関与していく上で、必要なプロセスは?
Cheung氏 大半のユーザーは、当社のツールの使い方を知っているため、プロセス全体としては他のFPGAと同じだ。ツールに関しても同様である。またRISC-Vについては、さらに簡素化されている。当社が提供するソフトウェア開発キット(SDK)は無償でダウンロード可能で、設定も非常に簡単だ。ただし唯一、「特殊なSoCプラットフォームを自社で構築したい」という申し出があった場合にのみ料金が発生するが、これも特に問題はない。顧客企業の1社であるソニーの場合、われわれが同社のセンサーだけでなく、FPGAのインテグレーションも手掛けている。
Efinixは最近、同社のFPGA「Trion T20」が、ソニーセミコンダクターソリューションズの「SPRESENSE」の「HDRカメラボード」に採用されたことを明かしている。SPRESENSEは、エッジおよびIoT(モノのインターネット)アプリケーション向けのオープンソース環境として設計された開発プラットフォームだ[クリックで拡大] 出所:ソニー
――Efinixは「出荷数1000万個」としている。この点について、詳しく教えてほしい
Cheung氏 大部分は、産業市場向けだ。われわれはまず産業市場から最初のトライアルを開始した。しかしわれわれの取り組みは、瞬く間に複数の分野へと拡大していくだろう。特に、自動車分野の他、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)、複合現実(MR:Mixed Reality)に関連したハイエンドの民生機器の分野などが挙げられる。また、もう少し後で高密度デバイスを本格的に展開し始める頃には、通信やデータコンピューティングなども加わるとみている。
現在のところ、当社が提供可能な最大規模のものは180k LE(ロジックエレメント)デバイスだ。産業分野をさらに探求していく上で、われわれが最も重要視しているのが、イメージングだ。イメージングは温度カメラや、ビデオカメラ、Time-of-Flight(ToF)カメラ、印刷などの他、最近ではLiDARなどさまざまな種類のカメラが使われている。これら全てに共通しているのが、柔軟かつ並列的なデータ処理である。既存のFPGAは、高価な上に電力消費も高いので、汎用市場向けとしては適さなかった。
また、RISC-Vも非常に興味深い。120k LEデバイスを使用する顧客企業のうち、全体の70〜80%以上が、当社のRISC-Vコアを使用している。RISC-Vの制御プレーンは非常にシンプルで、ソフトウェアのポータビリティやシステムインテグレーションなどを提供する。かなり高度な使い方をしている顧客企業もあれば、われわれが既に用意しているものをそのまま使って満足している企業もある。
――EfinixがRISC-Vで成功しているということは、あまり知られていないのでは。
Cheung氏 当社は常に、RISC-V関連のアナリストレポートの中に登場する。しかし、企業規模としては非常に小さいため、当面の事業展望として、既存のFPGA市場に多大な力を注いできた。RISC-Vは、われわれに組み込み製品という市場を作り出したが、さらに強力なのは、RISC-Vコア上でアクセラレーションを実行するTinyMLの最初のトライアウトを展開するという今後の計画だ。これは、人々がAIや機械学習をインフラに組み込もうとするとき、エッジへと導入するための別次元の技術になるだろう。
エッジでは、より多くの機能の統合が求められる。当社は既存の非AI機能と柔軟に連携してAI機能を組み込むことができる。われわれはその部分を占有したいわけではない。TinyMLは、多くのプロセッサコントローラーで使われているが、レイテンシとパフォーマンスの問題に直面することになる。
これは、市場をどのように拡大するかという先ほどの質問に対するもう1つの答えになるが、チップを作り続けるより、ソフトウェアを作る方が安く済むのだ。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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