Arm、最新プロセッサIP「Neoverse V2」を開発:高い整数演算性能と安全性を実現
Armは、クラウドやHPCのワークロード用途に向けたプロセッサIP「Neoverse V2」(コード名:Demeter)を開発、Neoverseのロードマップに追加した。
消費電力と実装面積を抑え、クラウドのワークロード性能を向上
Armは2022年9月15日、クラウドやHPC(High Performance Computing)のワークロード用途に向けたプロセッサIP「Neoverse V2」(コード名:Demeter)を開発、Neoverseのロードマップに追加したと発表した。
Neoverse V2は、「クラウドの性能向上」「消費電力とチップ面積の適切なバランス」「迅速なIPコアの供給」、といった顧客からの要求に応えて開発したという。具体的には、スレッド当たりの性能などを高めた最新のVシリーズコアやCMN-700メッシュインターコネクトなどを備え、高い整数演算性能を実現している。L2キャッシュとしては2Mバイトを内蔵した。また、Armv9アーキテクチャを採用し、メモリアタックに対する耐性を高めるなど、セキュリティ機能も強化した。
Neoverse V2は既に供給を始めており、複数のパートナー企業がNeoverse V2ベースのチップ設計に取り組んでいる。例えば、NVIDIAはデータセンターCPU「Grace」向けに活用。従来製品を用いたサーバに比べ、ワット当たりの性能は2倍となる予定だという。
2023年には次世代の「Nシリーズ」も供給へ
Neoverseは、クラウドやエッジ、5G(第5世代移動通信)ネットワークなどの用途に向けたプロセッサIPで、消費電力と演算性能のバランスを最適化している。特にArmは、Neoverseが目指す主な方向性として、「ユビキタス」「アクセラレーター」そして「電力効率」の3項目を挙げる。
Neoverseは、3つのシリーズを用意している。最高のパフォーマンスを実現した「Vシリーズ」、性能や拡張性などバランスの取れたCPU設計を可能にする「Nシリーズ」、高い効率を求められる用途を視野に入れ、電力消費を最小限に抑えた「Eシリーズ」である。また、チップレット/チップ間を相互接続するための規格である「UCIe」や「CXL」「AMBA CHI」などにも対応する。
Neoverseを搭載した高性能CPU/SoCの代表的な製品としては、富士通の「A64FX」、Ampereの「Altra Max」、AWSの「Graviton3」、Alibabaの「Yitian 710」などがある。
今回発表したNeoverse V2の他、NシリーズやEシリーズについても新製品の開発に取り組んでいる。特に次世代Nシリーズは、2023年にも顧客への供給を始める計画である。
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