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京都大学ら、高容量の「柔固体」型電池を安定動作:柔軟性のある新素材を共同開発
京都大学と鳥取大学、住友化学は、柔軟性のある新素材を用い、加圧せずに高容量の固体型電池を安定作動させることに成功した。
無加圧方式で約230Wh/kgの容量を達成、部材コストも削減
京都大学と鳥取大学、住友化学は2022年11月、柔軟性のある新素材を用い、加圧せずに高容量の固体型電池を安定作動させることに成功した。
全固体電池は、リチウムイオン二次電池に用いられる電解液を固体にすることで、容量や充放電時間、安全性などの課題を解決することが可能となる。ただ、硫化物系無機化合物をベースとした固体電解質は硬く、柔軟性に欠ける。このため、固体電解質と電極の界面をいかに接合させるかが課題となっていた。
一般的には、電池セルに圧力を加えて界面を接合させ、電池を作動させる。ところが、接合が弱いと性能が低下する。加圧に必要な部品を追加する必要もあるという。
そこで研究グループは、無加圧でも電極との界面接合が可能な、柔軟性のある固体電解質の開発に取り組んだ。新開発の新素材を用いた「柔固体」型電池について動作実証を行った。その結果、無加圧方式で約230Wh/kgの容量を達成した。加圧に必要な部品を省くことができるため、電池の軽量化と部材コストの大幅削減も可能になるという。
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