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Cdフリー量子ドットでRGB画素をパターニング次世代高効率ディスプレイ向け

シャープとシャープディスプレイテクノロジー(SDTC)および東京大学は、カドニウム(Cd)を含まない量子ドットでRGB画素のパターニングを行い、電流注入で発光させることに成功した。環境負荷が小さく、高い輝度とコントラスト、高色域を可能にした自発光型ディスプレイの実用化を目指す。

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青色のスペクトル幅を狭くし、再現可能な色域を拡大

 シャープとシャープディスプレイテクノロジー(SDTC)および、東京大学は2022年12月、カドニウム(Cd)を含まない量子ドットでRGB画素のパターニングを行い、電流注入で発光させることに成功したと発表した。環境負荷が小さく、高い輝度とコントラスト、高色域を可能にした自発光型ディスプレイの実用化を目指す。

 シャープらによる研究グループは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が進める「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」において、2019年度より「次世代高効率ディスプレイの材料およびプロセス開発」に取り組んできた。

 液晶や有機ELに代わる次世代ディスプレイ技術の1つとして、量子ドットの活用が注目されている。量子ドットは直径が約10nm以下の半導体粒子で、発光効率が高く粒子サイズにより発光波長を制御できるため、色再現性に優れている。また、発光スペクトル幅が狭く、色純度が高いことから、再現できる色域が広い、などの特長がある。ただ、一般的な量子ドット材料にはCdが含まれているため、環境への影響が懸念されているという。

 研究グループは今回、Cdを含まない量子ドットをRGB画素全てに適用した。また、RGB画素のパターニングは、ICの製造などで一般的に用いられるフォトリソグラフィ方式を採用した。このため、ディスプレイの高精細化や大面積化に対応することが可能である。さらに、青色のスペクトル幅を従来に比べ約60%狭くした量子ドットを採用することで、再現可能な色域の拡大を可能にした。カラーフィルターを用いないため、その分の光ロスもなくなり、電力消費を抑えることができる。

左は開発した量子ドット発光素子のRGB画素、右は今回採用した青色量子ドットの発光スペクトルと色域 出所:シャープ他

 今回の研究成果に基づき、東京大学は量子ドットの高品質化に向けた基礎研究をさらに進めていく。シャープとSDTCは、ヘッドマウントディスプレイなど中小型の高精細ディスプレイから、8K/4K大型ディスプレイに至るまで、幅広い用途に対応する省エネルギーディスプレイの早期実用化に取り組む計画である。電力消費を抑えたディスプレイの普及により、2030年における日本での省エネ効果量として11.3万kL(原油換算)を目指している。

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