脱炭素化に向け電動車などの開発プロジェクト始動:NEDOが総額420億円を支援
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、グリーンイノベーション基金事業の一環として、自動車産業を支援対象とした「電動車等省エネ化のための車載コンピューティング・シミュレーション技術の開発」プロジェクトを立ち上げる。公募した中から3つのテーマを採択。実施期間は2022〜2030年度で、NEDOは総額420億円を支援する。
レベル4の自動運転を実現し、70%以上の電力消費削減を目指す
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2022年7月、グリーンイノベーション基金事業の一環として、自動車産業を支援対象とした「電動車等省エネ化のための車載コンピューティング・シミュレーション技術の開発」プロジェクトを立ち上げると発表した。公募した中から3つのテーマを採択。実施期間は2022〜2030年度で、NEDOは総額420億円を支援する。
今回立ち上げたプロジェクトでは、分散型アーキテクチャ(エッジ処理志向)を前提にした「車載コンピューティング(自動運転ソフトウェア・センサーシステム)の研究開発」を行う。電動・自動走行車を普及させることで、脱炭素化に貢献するのが狙いである。
具体的には「レベル4自動運転を実現するための性能を担保しながら、徹底した省エネ化を進めるための研究開発」や「サプライチェーン全体で電動車などの開発を加速し、高度化を実現するための、シミュレーション基盤構築に向けた研究開発」である。
採択したテーマの1つは、「自動運転のオープン型基盤ソフトウェア」の研究開発。主な走行環境で「レベル4」の自動運転機能を担保しつつ、現行技術に比べ70%以上の消費電力を削減することを開発目標にする。
2つ目は、「自動運転センサーシステム」の研究開発である。同様に「レベル4」自動運転機能を知覚や認識面から担保しつつ、現行技術に比べ70%以上の消費電力削減を目指す。この2テーマについては2022〜2030年度を実施期間とする。
3つ目は、「電動車両シミュレーション基盤」となる性能検証手法などを確立していく。国内自動車メーカーや部品メーカーが共通的に利用できる形式とする。意図した機能の安全性(SOTIF)に対応し、「レベル4」自動運転を実現するために必要になるデジタルツインで、電動車両全体のシミュレーションモデルを、動力学シミュレーション精度90%以上とし、実機による性能検証の期間を半減できる手法を開発していく。このプロジェクトは2022〜2028年度が実施期間になる。
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