何度も繰り返して使える電池不要の漏水センサー:工場やプラント設備に後付け可能
エイブリックは、2019年から販売しているバッテリレスの漏水センサーに、新しいラインアップを追加した。繰り返して使用できることが最大の特長だ。
エイブリックは2023年1月17日、電源が不要の無線式漏水センサー「バッテリレス漏水センサ」に、新しいラインアップを追加したと発表した。
バッテリレス漏水センサは、わずか3滴から水滴を検知するリボン状のセンサー(センサーリボン)と、BLE(Bluetooth Low Energy)対応の無線タグで構成される。さらに、マイクロワットレベルと極めて少ない電力を集めて蓄電し、昇圧するエイブリック独自の「CLEAN-Boost」技術を搭載していることも特長だ。昇圧した電力を活用してBLE通信ができるので、電源が不要になっている。
今回発表したのは、新しいセンサーリボン「センサリボンII」である。サイズや重さは従来品とほぼ同じだが、繰り返して使用できることが最大の違いだ。従来品は、水に濡れたらセンサーリボンを交換する必要があった。センサリボンIIは、濡れても、乾かせばまた使うことができる。「漏水の現場から水を拭き取った後は、センサリボンIIを交換せずに、そのまま乾かしておく。そうすれば、また水滴(漏水)を検知できるようになる」とエイブリックは説明する。
エイブリックはバッテリレス漏水センサを、2019年から販売しているが、繰り返して使えるセンサーリボンのニーズは以前からあったという。「発売当初、このバッテリレス漏水センサは、“漏水の懸念がある場所”に設置されることを想定していた。だが実際には、“漏水する場所”で使われているケースが多かった」と、エイブリックは説明する。
センサリボンIIは、累積の発電時間が500時間に達するまで、繰り返して使用できる。「濡れている時間により、使用できる回数は変わる。漏水を検知してすぐに対応すれば、繰り返して使用できる回数はより多くなる。何時間か放置されていた場合は、その分発電していることになるので、使用回数は相対的に少なくなる」(エイブリック)
エイブリックのセンサーリボンは、2種類の金属に触れると発電する仕組みになっている。従来品では糸状の金属を使用していたが、センサリボンIIでは、糸状から板状にすることで金属量を増やした。つまり、1本のセンサーリボンで発電できる量を増やしている。これによって、繰り返して使用することが可能になった。
現在、エイブリックのバッテリレス漏水センサは、主に工場や商業施設、サーバルーム、インフラ設備、プラントなどで採用されている。「漏水センサーを後付けできることから、主に既存の施設で引き合いが強い。2019年の発売以降、大きな手応えを感じている。繰り返し使えるセンサリボンIIの登場によって、新たな顧客を開拓できるのではないかと期待している」(エイブリック)
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