“手に汗握る”を数値化、発汗センシングデバイス:熱中症や居眠り運転の防止に
信州大学発ベンチャーのスキノスは、「第9回 ウェアラブル EXPO」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)に出展し、人の発汗を検知/記録して水分補給や休憩を促す発汗センシングデバイスを展示した。
信州大学発ベンチャーのスキノスは、「ネプコン ジャパン」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)と併催されている「第9回 ウェアラブル EXPO」に出展し、人の発汗を検知/記録するウェアラブルデバイスを展示した。発汗を数値化することで、今まで感覚的に行ってきた水分補給や休憩の適切なタイミングを知らせ、熱中症や居眠り運転の防止などに役立てる。
発汗には、炎天下や運動時に体温を一定に保つために身体から汗が出る「温熱性発汗」と、精神的ストレスや危機認知などいわゆる“手に汗握る”状態で手のひらや足の裏から汗が出る「精神性発汗」がある。
スキノスの発汗センシングデバイスは、測定部の皮膚をカプセルで覆い、測定部の空気湿度と非測定部の空気湿度をセンサーで検知、比較することで発汗量(蒸散水分量)を測定する。同技術を使用した設置型デバイスは、温熱性発汗と精神性発汗の双方に適応可能で、医療機関向けや研究機関向けに既に提供している。展示では、一般ユーザーが身に付けて使用できる腕時計型、指輪型のデバイス(開発中)が紹介された。
温熱性発汗の計測には、身体からの発汗を検知するために腕時計型のデバイスを使用する。身体の60〜70%は水でできていて、体重の約2%の水分が喪失しただけでも身体のパフォーマンスが低下するともいわれている。特に建築現場や農業、工場などのいわゆる現場仕事では、「摂取している水分量の2倍の汗をかいている場合もある」という。同製品では、心拍数、発汗量、皮膚温、活動量を検出できるマルチセンサーを用いて熱中症の危機予測を行い、アラートで利用者に水分補給を促す。
精神性発汗は、ヒトの高度な自律神経機能を反映する特異な生理現象で、危機を認知した場合に発生する正常な反応だ。一方で、同社の研究では、眠気や疲労など認知機能が低下している場合は、発汗量が減少し、変化が見られなくなることが分かっている。活用場面としては、同社の指輪型デバイスを自動車の運転時に使用することで、手のひらの発汗量の変化から認知機能の低下を検知し、ドライバーにアラートで休憩を促すことができる。また、高齢ドライバーの自動車運転認知機能の行動評価への応用も検討されている。
同社は、「今後はデバイスの小型化と個々人の体質による発汗のしやすさへの対応を強化する」という。温熱性発汗用の腕時計型デバイスは2023年度中、精神性発汗用の指輪型デバイスは2026年ごろの販売開始を目指している。
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