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名古屋大学ら、熱膨張抑制剤の微粒子化に成功局所領域の熱膨張抑制を可能に

名古屋大学と名古屋大学発ベンチャーのミサリオは、温めると縮む熱膨張抑制剤「ピロリン酸亜鉛マグネシウム」の微粒子化に成功した。

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粒径1μmレベルでも最高レベルの負熱拡張を実現

 名古屋大学と名古屋大学発ベンチャーのミサリオは2023年1月、温めると縮む熱膨張抑制剤「ピロリン酸亜鉛マグネシウム」の微粒子化に成功したと発表した。ミサリオは、粒径が約1μmの新材料を、「PyroAdjuster(パイロアジャスター)」の商品名で試験供給する。

 名古屋大学の竹中康司教授らは、巨大な負熱膨張を抑えることができる熱膨張抑制剤を2021年1月に発見した。ピロリン酸亜鉛マグネシウムは、−10〜80℃の温度域で−60ppm/℃に達する大きな負の線膨張係数を示すことから、強力に熱膨張を抑制できるという。ただ、大学の研究室レベルで実現していたのは、粒径が10〜50μmの粗粉末であった。

 そこで今回、ミサリオと共同で、粗粉末と同等性能を維持しながら、粒径を約1μmまで微粒子化した。これにより、従来は困難であった局所領域の熱膨張制御が可能になるという。

PyroAdjusterの電子顕微鏡写真と外観
PyroAdjusterの電子顕微鏡写真と外観 出所:名古屋大学

 負熱膨張材料としては既に、安価で環境にも優しい「β-ユークリプタイト(LiAlSiO4)」などが実用化されている。一方で、従来の10倍を超える巨大な負熱膨張に対応可能な材料の要求も強まっているという。しかし、これらに対応できる現行の材料は高価であったり、有害な元素を含んだりして、実用化に向けては課題もあった。

 開発したPyroAdjusterは、パワー半導体や3次元集積回路素子など先端電子デバイスの高機能化や省電力化、長寿命化に寄与できるとみている。

 なお新材料は、名古屋大学大学院工学研究科の竹中康司教授と加納雅人博士前期課程学生、春日井涼太博士前期課程学生、同大学工学部の金森達也学部生および、ミサリオが共同で開発した。

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