車載用5MピクセルRGB-NIRセンサーでDMSを向上:STとして「世界初」展示
STマイクロエレクトロニクスは、「第15回 オートモーティブ ワールド」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)に出展し、「車載向け5.1Mピクセル RGB-NIRセンサー」や「AI搭載6軸慣性モジュール」などを展示した。
STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は「第15回 オートモーティブ ワールド」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)に出展し、車載向け5.1Mピクセルのイメージセンサーや、AI(人工知能)を搭載した6軸慣性モジュールなどを展示した。
「世界初」車載向け5.1Mイメージセンサーを展示
STは、DMS(ドライバモニタリングシステム)などの車室内モニタリングシステムに向けた5.1Mピクセル (2560×1984ピクセル)RGB-NIR(カラー-近赤外線)センサー「VD1940」および「VB1940」を展示した。同製品のデモを展示するのは、日本が初めてとなる。
VD1940/VB1940は、カラーイメージセンサーとNIRセンサーを1パッケージに搭載していて、画質や解像度を落とすことなく、RGB/NIRの画像を1フレームごとに切り替えて表示できるのが特長だ。NIR画像取得用のカメラを用意する必要がなくなるので、車室内モニタリングに使うカメラの数を減らすことができる。
同製品には、STの第2世代3D積層裏面照射型(BSI)ウエハー技術が採用されていて、ダイサイズ当たりの光学面積とオンチップ処理性能を高めている。これにより、ベイヤー変換などのアルゴリズムをセンサー側で処理できるので、消費電力削減にもつながる。ベイヤー変換では、例えば「RGB NIR 4×4」パターンのカラーピクセルを、さまざまなSoCと互換性を持つRGGBフォーマットに再構成することが可能だ。その他、RGBピクセルから追加のNIR情報を取得し、NIR画像の解像度を向上させることもできる。
車室内モニタリング用のイメージセンサーは、主要な自動車市場で導入義務化が進んでいるDMSで必要な技術で、ドライバーの注意力診断やシートベルトの装着チェック、幼児の置き去り防止などの目的で使われる。VD1940、VB1940とも現在サンプル出荷中で、量産は、2024年モデルに合わせて開始する計画だ。
車載用AI搭載6軸慣性モジュール
AIを搭載した車載用6軸慣性モジュール「ASM330LHHX」も展示した。同製品は、3軸加速度センサーと3軸ジャイロセンサーを1パッケージ(2.5×3.0×0.83mm)に集積したSiP(System in Package)で、機械学習コアを内蔵していることから、AI処理(推論処理)をセンサー内で行えることが特長だ。「機械学習コアを、初めて車載グレードの6軸慣性モジュールに搭載したことがポイントだ」と説明員は強調する。
ASM330LHHXを自動車に搭載することで、盗難目的の不正なジャッキアップや衝撃の感知、事故災害時の車の状況(転倒の有無など)をセンサー自身で判定できるようになる。従来は、こうした判断はセンサーに外付けしたマイコンで行っていた。
自動車以外のアプリケーションにも適用できる。例えばPCに搭載した場合は、かばんからPCを取り出すと「PCが縦方向に動いた」ことを検知できる。つまり「これからPCを使用する」と想定できるので、「縦方向の動きを検知したら、PCを自動で起動できるようにする」という仕組みなどを構築することができる。
担当者は、車載用のAI活用について、「AIは、さまざまな情報から“98%”確からしい結果を導き出すものだ。車載業界では、安全配慮などから“100%正しい”ことが求められるが、AIを活用する以上は“100%”は難しい。しかし、AIはスマートフォンなどでは既に活用されている。現在は自動車のデジタル化(スマートフォン化)が進んでいるため、今後、需要が伸びてくると想定している」と述べた。
ASM330LHHXは、2022年6月からAEC-Q100規格に準拠したモデルの量産を開始していて、単価は、1000個購入時に約10.44米ドルとなっている。
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