低温水溶液プロセスで、BaTiO3ナノシートを合成:厚さ1.8nmで強誘電特性を確認
名古屋大学は、60℃という低温の水溶液プロセスで、チタン酸バリウムナノシートの合成に成功した。単位格子3個分の厚みに相当する1.8nmまで薄くしても、強誘電特性は維持されていることを確認した。
反応時間により、膜厚の制御も可能
名古屋大学未来材料・システム研究所の長田実教授らによる研究グループは2023年2月、60℃という低温の水溶液プロセスで、チタン酸バリウム(BaTiO3)ナノシートの合成に成功したと発表した。単位格子3個分の厚みに相当する1.8nmまで薄くしても、強誘電特性は維持されていることを確認した。
強誘電体は、メモリやセンサー、アクチュエーター、振動発電などに利用されているが、数ナノメートルレベルの極薄になると、「サイズ効果」により強誘電特性が消失するという。また、強誘電体を代表するBaTiO3などでは、ナノシートを合成するための新たな手法が求められていた。
研究グループは今回、BaTiO3ナノシートを合成する手法として、厚み1nmの酸化チタンナノシートを利用し、表面反応によってBaTiO3へ構造変化を誘起する「テンプレート合成法」を検討した。水・エタノールの混合溶液中で、酸化チタンナノシートを水酸化バリウムと反応させ、60℃という低温環境でBaTiO3ナノシートを合成することに成功した。これまでの方法だと、BaTiO3を合成するため1000℃以上で焼成をする必要があったという。
合成したBaTiO3ナノシートについて、透過型電子顕微鏡やラマン分光測定による構造解析を行った。この結果、欠陥のないBaTiO3が形成されていることを確認した。開発した手法を用いると、膜厚の制御も可能である。反応時間を5、10、25時間と変化させたところ、2格子から6格子のナノシートを合成することができた。
さらに、圧電応答力顕微鏡を用い、ナノシート1枚当たりの強誘電特性を評価した。この結果、強誘電特性は厚さ1.8nmまで維持されるが、厚さ1.4nm(単位格子2個分に相当)になれば消失することが分かった。
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