ルネサス、4つの技術を「R-Car S4」向けに開発:次世代E/Eアーキテクチャを支える
ルネサス エレクトロニクスは、次世代の車載E/E(電気/電子)アーキテクチャを進化させるために重要となる4つの技術を開発した。これらの技術は、車載コミュニケーションゲートウェイ用SoC「R-Car S4」に搭載されているという。
高性能と低消費電力、高速起動、電力効率の高い通信、セキュリティ
ルネサス エレクトロニクスは2023年2月、次世代の車載E/E(電気/電子)アーキテクチャを進化させるために重要となる4つの技術を開発したと発表した。これらの技術は、車載コミュニケーションゲートウェイ用SoC(System on Chip)「R-Car S4」に搭載されているという。
4つの技術とは、「高性能化と低消費電力化を両立させる技術」「起動プログラムを高速に読み込む技術」「電力効率の高い通信技術」および、「車外と安全に通信できるセキュリティ技術」である。
具体的には、高性能を実現する「アプリケーションシステム」と、待機電力を極めて小さくするための「コントロールシステム」を1チップに統合。これら2つのサブシステムについて電源を制御し、動作させる回路をダイナミックに変更することで、車両の動作状況に応じた性能と電力の最適化を可能にした。
2つ目は、外部フラッシュメモリに配置した起動プログラムを50ミリ秒以内に読み込む技術である。一般的には起動プログラムの読み込みや復号などに約70ミリ秒を要するという。今回は、外部フラッシュメモリにプログラムを分割して配置した。動作時にはまず最低限のプログラムのみを読み込んで起動させる。並行して残りのプログラムも起動させることで、高速起動を可能にした。
3つ目は、限られた電力でネットワーク機能を実現するための技術である。これを可能にするため、専用のネットワークアクセラレーターを用意した。CPU処理をオフロードすることで電力効率を毎秒9.4Gビット/Wに改善。さらに、TCAMをハッシュを使用したSRAMテーブルに置き換えることで、電力効率を毎秒11.5Gビット/Wまで向上させた。
4つ目がセキュリティ技術である。まず、SoCが受信したパケットを解析して、高い信頼性が要求される通信かどうかを認識する。その結果に応じて、ネットワークアクセラレーター内での経路や制御を分断する。これによって、セキュリティ上の脅威から車内通信を守ることができるという。
今回の研究成果は、「国際固体素子回路会議 ISSCC 2023」(2023年2月19〜23日、米国サンフランシスコ)で、その詳細を発表した。
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