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1日1回の外出は2000円の価値? 「孤独」がもたらす損失を試算してみる「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(11)(1/9 ページ)

今回は、「移動」と「ウェルビーイング」を解析した論文を読み解いてみました。そこで得た結論は、「孤独を回避して幸せになりたいのなら、毎日外へ出ろ」というものです。

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今回のテーマは、すばり「お金」です。定年が射程に入ってきた私が、あらためて気づいたのは、「お金がない」という現実でした。2019年には「老後2000万円問題」が物議をかもし、基礎年金問題への根本的な解決も見いだせない中、もはや最後に頼れるのは「自分」しかいません。正直、“英語に愛され”なくても生きていくことはできますが、“お金に愛されない”ことは命に関わります。本シリーズでは、“英語に愛されないエンジニア”が、本気でお金と向き合い、“お金に愛されるエンジニア”を目指します。⇒連載バックナンバー


「見苦しいジジイ」を作り出す正体

 以前、娘から『務めているバイト先で、初老のお客さんから、メールを送りつけられて困っている』と相談を受けたことがあります。

 娘はスポーツジムで受付のバイトをやっており、そのお客さんの一人に『業務で』愛想よくしていたのですが、そのお客さんは、何を勘違いしたのか、娘にメールを送ってきたそうです。

 娘は、友人と同じノリで、メールアドレスを教えてしまったようです。まあ、こういうことになるから、メールであれSNSであれ、個人情報は赤の他人に開示してはならないのですが、そういうことは、失敗から学ぶしかありません。

 ただ、そのメールの内容が ―― はっきり言って『ドン引き』。

money01

 そこには、「自分の過去の輝かしい経歴」が、そこに記載されていたからです。海外赴任した経歴だの、政府関連の仕事をしただの、大金を動かすプロジェクトリーダをやっただの ―― ひと言で言えば、「履歴書」です。

 『今の自分ではなくて、"昔の武勇伝"を伝えたいシニア』 ―― これは、もう、飲み会における、若手に対するハラスメントNo.1案件であり ―― そして、私にも、心当たりのある話です*)

*)例えば、こちらの連載など

 私は以下の文章を書き、それをコピペして相手に送付しておけ、と娘に言っておきました。

○○様

いただいたメールにつきまして、会社の法務部で業務を行っている父*)に相談しました。

『その情報を知り、または知りえる状況にあることは、個人情報保護法違反の当事者(正犯)となり、罰則の対象になり得る』と警告されました。

申し訳ありませんが、いただいたメールは、先程、全文消去させて頂きました。

今後、このようなメールは、一切御遠慮させて頂きたく、なにとぞよろしくお願いします。

江端長女

*)正確には、『知財部から特許明細書に関して指示を受けている父』ですが、この程度の違いは、瑣末なことです。

 この一件はその後、無事(?)終結したようです(詳細は聞いていませんが)。

 まあ、娘の背後に、知財部の(知り合いと一緒に仕事をしたことのある)父親がいて、そこに「仁王立ち」で立っているという絵柄は ―― シニアの『"昔の武勇伝"ハラスメント』をたたきつぶすのに、十分な、脅威(恐怖)だっただろうと思います。

 この事件は、私に、

―― 自分のシニアを放置し続けると、どんどん自分を見苦しくすることになる

と痛感させた一件となりました。



 『シニアになると、ジュニアの頃のパフォーマンス』が発揮できなくなるのは、事実です。

 ですから、『過去の自分の栄光にすがりつきたい』『他の人に、過去の自分のスゴさを理解してもらいたい』というシニアの気持ちは、よく分かります。

 これはシニアだけではなく、自分の出身大学をひけらかす新人、過去に「生徒会長をやっていた」と自慢し続ける高校生、自分は「源氏の末裔」であると(証拠もなし)に自慢する小学生*) ―― などでも見られます。

*)筆者のブログ

 しかし、自分を「スゴい奴」に見せたいのであれば、上記は悪手です。なぜなら、その自慢は、「今の自分が、矮小な存在に堕ちた」ということを、自分で独白しているようなものだからです。

  • 自分の魅力や能力を、過去の実績で語っても無駄
  • 自分の魅力や能力を主張したいのであれば、まさに"今"の、"現在進行形"の自分の仕事や学業で見(魅)せなければならない

という、冷やかな現実があります ―― そもそも、過去の栄光”だけ”でチヤホヤされる人間は、めったにいないのです。



 私は、娘が上記のメールを見せてくれた時、『「ウチの娘に粉(こな)かけてくるジジイ」に腹を立てる』という気持ちより、『「こんなことをでもしなければ、若い娘の興味を引くこともできないジジイ」に同情する気持ち』が上回りました*)

*)このジジイに関しては、その自慢の方向性も間違っていますが。この内容で、若い娘が、自分に興味を持つかもしれない、と考える思考回路が、もう絶望的にダメです。

 そして、この見苦しいジジイは ―― 現在の私であり、これから死に至るまでの私自身である、という、絶望的な自覚に陥っています。

 このような「見苦しいジジイ」を作り出す正体は、分かっています。

 「孤独」です。

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