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「事業に回復の兆し」と強調、Intel CEOアナリストらは懐疑的な見方も(2/2 ページ)

Intel CEOのPat Gelsinger氏は2023年2月のカンファレンスコールで、同社の事業に回復の兆しが見られると語った。

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助成金獲得のための戦略か

 米国の投資会社であるWedbush Securitiesでシニアバイスプレジデントを務めるMatthew Bryson氏は、EE Timesに提供したレポートの中で、「Intelの配当減額の判断は、他の戦略的な資本保護方法に足並みをそろえた形だといえる。しかし、報道関係者たちから最近、『Intelは、近々CHIPS法に基づいた政府援助の主要な受益者になる見込みであるにもかかわらず、今回の人員削減と配当減額を実行したのは、適切な判断だったのだろうか』という疑問が提示されていることを踏まえると、政治的動機に基づいた選択だったのではないかと思われる。復活の兆しについてはまだあまり見られないようだが、エンドマーケット需要における全般的な回復傾向に関していえば、復活の兆しは全くないと断言できる」と述べている。

 また同氏は、「むしろ、PC/エンタープライズ要件がまだ安定していないため、ベンダー各社は現在も、全体的に製造要件を削減しているところだ。今四半期のPC/エンタープライズ市場はいずれも、これまで悪化の一途にあることから、今後コンポーネントサプライチェーン全体が、もっと後になって中途半端に回復していく可能性がある」と付け加えた。

 ドイツ銀行のアナリストであるRoss Seymore氏も、電話会議において、「Intelが今回、配当金を減額したタイミングが、米国政府とEUが刺激策資金を提供するための準備を進めているさなかだったという点に疑問がある」と述べている。

 Seymore氏は、「これまでにもさまざまな政治団体が『公的資金を受け取りながら、同時に株式買い戻しと配当を行う企業が存在する』との懸念を示している」と付け加えた。

 Gelsinger氏によると、「Intelの決断は、政治的な問題に対応するためのものでは全くない」という。

 それでも同氏は、「われわれは、米国政府とEUからの刺激策資金を勝ち取りたいと考えている。この点に関しては、積極的な取り組みを進め、米国と欧州それぞれの政府関係者たちと密接に連携してきた」と語った。

 またGelsinger氏は、「2023年2月の報道によると、Intelは、『Arrow Lake』プロセッサ向けにTSMCの3nmプロセスを適用するオーダーを延期したとされているが、これは真実ではない」と説明した。

 「Arrow Lakeと3nmプログラムについては、TSMCとの間で順調に進んでいる。また3nmプロセスの社内開発も軌道に乗っている。実行する上でのさまざまな課題に関しては、峠を越えたところだ。このような延期のうわさは、他のさまざまなうわさと同様に、われわれが実現することによって完全に誤りであることが実証されるだろう」(Gelsinger氏)

量産開始が延期されている「Sapphire Rapids」

 Gelsinger氏は、AI(人工知能)技術におけるIntelの台頭も強調した。

 「AIには幅広い要件があり、中には、1000億ものパラメーターのモデルで何週間にもかけて学習するような巨大な学習環境もある。そうした用途のために、われわれは極めてハイエンドな製品を提供している」(同氏)

 Gelsinger氏は、「これらのワークロードは、データ準備や推論、Sapphire Rapidsのフリートで実行される、より中規模モデルでの学習などが含まれる。Sapphire Rapidsの性能には、目を見張るものがある。この性能により、今後、AIがあらゆるアプリケーションに導入されるにつれて、Sapphire Rapidsが主流になることを期待している」と語った。

 アナリストの中には、Sapphire Rapidsの将来性に懐疑的な人物もいる。

 SusquehannaのシニアアナリストであるMehdi Hosseini氏は、EE Timesに「2023年後半にSapphire Rapidsが大量に導入されるかどうかは疑問だ」と述べる。「Sapphire Rapidsが大幅な性能向上を約束できる保証もない」(同氏)

 さらに、Meta、Google、Amazonが運営するデータセンターで使用されているサーバの需要は低迷しているとHosseini氏は付け加える。同氏によると、Meta/Facebook向けに構築されたサーバは前四半期比で15%減、Google Cloudは同10%減、AWS(Amazon Web Services)とMicrosoft(Azure)はそれぞれ同5%減になったという。

【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】

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