Infineon、GaN Systemsを8億3000万米ドルで買収へ:GaNロードマップを「大幅に加速」
Infineon Technologiesは2023年3月2日(ドイツ時間)、GaN(窒化ガリウム)パワーデバイスを手掛けるカナダのGaN Systemsを8億3000万米ドルで買収すると発表した。
Infineon Technologies(以下、Infinoen)は2023年3月2日(ドイツ時間)、GaN(窒化ガリウム)パワーデバイスを手掛けるカナダのGaN Systemsを8億3000万米ドルで買収する正式契約に署名したと発表した。
広い市場で展開するGaN専門メーカー
GaN Systemsは、カナダのオタワに本社を置く2008年設立のGaNパワーデバイス専門メーカーで、HEMT(高電子移動度トランジスタ)構造を用いた650V耐圧、100V耐圧のGaNパワートランジスタを展開している。
同社は、民生機器、データセンター、再生可能エネルギー、ファクトリーオートメーション/モーター、車載と幅広い市場をターゲットとしていて、2023年1月に米国ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2023」においても電気自動車(EV)の7.2kWオンボードチャージャー(OBC)やスマートフォンおよびノートPC用充電器、D級オーディオシステムなど、各市場での採用事例などを紹介していた。
Infineonは、2015年のInternational Rectifier買収によってGaNパワーデバイスに関する製品/技術を獲得した。同年にはパナソニックとGaNパワー半導体開発で協業すると発表し、共同開発品の第1世代であるノーマリーオフのGaN-on-Siトランジスタ構造を採用した「CoolGaN」を展開。2021年には、パナソニックと第2世代品を共同開発/製造する契約を締結し、650V耐圧のGaN HEMTを2023年前半にも市場投入の予定と発表した。
InfineonのCEO(最高経営責任者)、Jochen Hanebeck氏は、「GaN Systemsの買収は、比類ない研究開発資源、アプリケーションの理解、顧客プロジェクトのパイプラインによって、当社のGaNロードマップを大幅に加速させることになる」と述べている。
GaNの製造能力拡大を進めるInfinoen
フランスの市場調査会社Yole Groupによると、パワーアプリケーション向けGaNデバイスの市場規模は2027年まで年平均成長率(CAGR)56%と大きく伸び、20億米ドルにまで拡大することが予測されている。こうした市場の需要拡大に向け、Infineonは2022年2月、マレーシアのクリムにある拠点にGaNおよびSiC(炭化ケイ素)半導体のフロントエンド新工場を建設すると発表するなど、製造能力の拡大を進めている。
この新工場からは2024年後半に出荷を開始する予定で、同工場の稼働によってSiC、GaNベースの製品で新たに年間20億ユーロの売り上げ増となる見込みという。
GaN SystemsのCEO、Jim Witham氏は、「GaN Systemsのチームは、Infineonと合流することで、補完的な強みを発揮し、高度に差別化された顧客サービスを提供できる。互いの専門知識によって、GaNの可能性を最大限引き出せるだろう。GaN Systemsのファンドリーの製造能力(GaN Systemsはファブレスメーカーで、TSMCをファウンドリーパートナーとしている)とInfineonの製造能力を組み合わせることで、幅広いターゲット市場で加速するGaN導入に対応するための最大限の成長能力を得られる」とコメントしている。
なお、今回の買収は、現金取引で行われる予定で、規制当局の承認を含む、通常の取引完了条件を満たすことが前提となっている。
関連記事
- 小型高効率、GaN採用の240W USB-Cチャージャー
Infineon Technologiesは、世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Europe 2022」(2022年5月10〜12日、ドイツ)において小型軽量で高効率の240W USB-Cチャージャーを実現するGaN(窒化ガリウム)ソリューションを紹介した。 - BMW、GaNパワー半導体の供給確保へ
GaN Systemsは、BMWとGaN(窒化ガリウム)トランジスタのキャパシティー(生産能力)を確保する契約を締結したことを発表した。供給が保証されることで、BMWはサプライチェーンの信頼性を確保することができる。GaN SystemsのCEO(最高経営責任者)を務めるJim Witham氏はインタビューの中で、「GaN Systemsは連続生産によって複数のアプリケーションに対応したキャパシティーを提供する」と述べている。 - SiCは自動車、GaNはスマホが普及をけん引
パワーエレクトロニクスでは、GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)などのワイドバンドギャップ(WBG)デバイスの採用が進んでいる。シリコンは依然として市場を独占しているが、GaNやSiCデバイスの登場によって、技術はより効率的な新しいソリューションに向かうと予想される。 - 「EVや産業用途でGaNを見直すべき」 GaN Systems CEO
パワーエレクトロニクスの展示会「PCIM Europe 2019」で、会期3日目の基調講演に登壇したGaN SystemsのCEOを務めるJim Witham氏。同氏は、EV(電気自動車)やハイパワーの産業機器で、GaNパワーデバイスを見直すべきだと強調する。 - ロームとGaN Systemsが協業、将来的に共同生産も
ロームとGaN Systems(ガンシステムズ)は2018年6月5日、GaN(窒化ガリウム)パワーデバイス事業における協業を開始したと発表した。 - PCBにパワーMOSFETを埋め込む、Infineonの車載用デバイス
Infineon Technologiesは、「electronica 2018」で、GaNパワーデバイスの量産開始を発表。さらに、車載用パワーデバイスとして、PCBにパワーMOSFETを埋め込む「Chip Embedding」の技術を開発中であることも明かした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.