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SiCウエハー欠陥無害化技術の新会社が始動:8インチ見据えた新製造法、2025年の実用化へ(2/2 ページ)
関西学院大学と豊田通商は2023年3月、SiCパワー半導体ウエハーに関する研究開発会社「QureDA Research」を設立したと発表した。「国内外の企業と来たる大口径化(8インチ)を見据えたパワー半導体SiCウエハーの新たな製造法を2025年に実用化することを目指す」としている。
超高温下で原子が自ら動く、「Dynamic AGE-ing」の概要
金子氏は今回の発表会見で、Dynamic AGE-ingの概要について説明した。
一般的に、SiCウエハー基板の加工は、その表面を機械研磨とCMP(化学機械研磨)で平たん化した後、エピタキシャル層を成長させる。しかし、前述の通り、こうした方法では、結晶欠陥や残留加工ひずみなどの技術的課題が残っていた。
左=従来の量産SiCウェハー製造における課題/右=市場に流通するSiCウェハーにおける品質バラツキ。バルク品質(窒素ドープ分布)や内部の結晶欠陥(BPD)および、残留加工ひずみの例[クリックで拡大] 出所:QureDA Research
これに対しDynamic AGE-ingは、1600℃から2100℃という超高温下で、温度を変化させるなどして、非接触でウエハー表面の原子の配列を自律的に制御し、ウエハー表面に欠陥のない高品質なSiC結晶の層を作るというもの。具体的なプロセスは、アニーリング、エッチング、結晶成長の3つで、実際に残留加工ひずみの完全除去、BPDフリーを実現しているという。
左=Dynamic AGE-ingを用いたSiCウエハー品質バラツキの抑制について/中=4°オフ-Si面4H-SiC基板へのDynamic AGE-ingプロセス適用例/右=残留加工ひずみの完全除去、BPDフリーの実例[クリックで拡大] 出所:QureDA Research
QureDA Researchは、このDynamic AGE-ingを用いたSiCウエハー製造戦略として、バルク成長とエピ成長の間の“加工”という中間工程において、既存の加工技術との擦り合わせにより、前後工程のコスト課題や品質課題を解決。SiCウエハー製造全体のフローの再構築(最適化)を促すプロセスを目指すとしていた。
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