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空モビリティ向け、超軽量リチウム金属電池を披露成層圏実験にも成功

ソフトバンク主催の最先端技術を体感できる技術展「ギジュツノチカラ ADVANCED TECH SHOW 2023」では、空飛ぶ基地局「HAPS」やドローン活用に向けて開発中の軽量な次世代リチウム金属電池が披露された。

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 ソフトバンクは2023年3月22〜23日、最先端技術を体感できる技術展「ギジュツノチカラ ADVANCED TECH SHOW 2023」を都内で開催し、空飛ぶ基地局「HAPS(High Altitude Platform Station)」やドローン活用向けに開発している次世代リチウム金属電池を披露した。同技術は、2023年1月に米国で行った成層圏(−80〜−60℃)での実証実験で、正常動作が確認されている。

次世代リチウム金属電池(電池パック)
次世代リチウム金属電池(電池パック)[クリックで拡大]

 同社は、東日本大震災をきっかけに、地震や津波などにも影響されない通信を目指し、2017年からHAPSの開発に着手。既に成層圏での飛行実験にも成功している。同会場では、HAPSに関する最新の研究実績も展示されていた。

空モビリティは「軽量化」が命

 HAPSやドローンなどの空モビリティの分野では、軽量かつ重量エネルギー密度の高い電池が求められている。同社が開発中のリチウム金属電池の電池セルは、負極にリチウム金属箔単体を用いることで、重量エネルギー密度520Wh/kgを達成した。展示では、リチウム金属電池セル(62g)と同容量を置き換える場合、ニッケル水素二次電池は24本(ケース込みで532g)が必要だと示していた。

リチウム金属電池(セル)同容量のニッケル水素二次電池 左=リチウム金属電池(セル)/右=同容量のニッケル水素二次電池[クリックで拡大]

 同社によると、リチウムイオン電池(LiB)やニッケル水素二次電池は、体積エネルギー密度に特化したモノが多く、空モビリティに求められる要件を十分に満たすことは難しいので、要件を満たす次世代電池としてリチウム金属電池が注目されているという。ただ、リチウム金属電池には、充電中にリチウムが針状(デンドライト)に析出するという大きな課題がある。充電を繰り返すことによりデンドライトが成長し、電池を内部から破壊してしまうため、世界中でデンドライト対策の研究が行われている。

 ソフトバンクは、リチウム金属電池に拘束圧を掛けることで、寿命が200サイクルまで向上することを発見した。担当者は、「最適な拘束圧は3〜5気圧(atm)だ。これより強いと電池セルが壊れてしまい、これより弱いと十分な延命効果が得られない。EV(電気自動車)用の電池では、1000サイクル以上を求められるが、太陽光エネルギーを活用する空モビリティ分野では、200サイクルで許容されることに着眼することで実現に至った」と説明した。

 また、電池セルを束ねた電池パックとして実用化するためには、より軽量な装置で拘束圧をかける仕組みが必要だ。同社は、「バンド拘束」「クッション拘束」「バネ拘束」など、より軽量かつ有効な加圧方法を模索しているといい、「現状は、加圧性と重量の観点から『クッション拘束』が有力だ」(担当者)という。

 リチウム金属電池の拘束治具イメージ(図a)/拘束圧にサイクル向上(図b)/拘束方法の主な候補(図c)
リチウム金属電池の拘束治具イメージ(図a)/拘束圧にサイクル向上(図b)/拘束方法の主な候補(図c)[クリックで拡大]

重量エネルギー密度を10%向上する「次世代樹脂箔」

 ソフトバンクは、600〜1000Wh/kgのより高い重量エネルギー密度を持つ電池の開発にも取り組んでいる。現在主流のLiBは、集電体に銅箔が使われていて、電池の総重量の約15%を占めている。同社は、集電体などの構成部材の軽量化が重量エネルギー密度の向上につながると考え、次世代樹脂箔を開発した。次世代樹脂箔は、厚さ0.5μmの銅の間に6μmの樹脂層を挟んだ3層構造で、重量は銅箔の4分の1になるという。

次世代樹脂箔
次世代樹脂箔[クリックで拡大]

 LiBの集電体を銅箔から次世代樹脂箔に置き換えたものが開発できれば、重量エネルギー密度を10%向上することができる。しかし、次世代樹脂箔は、集電体への溶接が難しいことや、中央に絶縁樹脂層を含むため従来の金属箔に比べて抵抗値が高くなるという課題があった。同社は、樹脂に独自の工夫を施すことで溶接を可能にすると同時に、樹脂箔自体も工夫することで通常の銅集電箔に劣らない性能の樹脂箔を開発したという。ソフトバンクは、関連会社と同技術の研究開発を継続し、2023年度中の製品化/提供を目指している。

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