理研ら、量子計算クラウドサービスを提供開始:53量子ビットでのスタート
理化学研究所、大阪大学らの研究グループは2023年3月27日、超伝導方式による量子コンピュータ初号機を開発し、同技術を活用した「量子計算クラウドサービス」を提供開始したと発表した。
理化学研究所(理研)、大阪大学(阪大)、産業技術総合研究所(産総研)、情報通信研究機構(NICT)、富士通、NTTらの研究グループは2023年3月27日、超伝導方式による量子コンピュータ初号機を開発し、同技術を活用した「量子計算クラウドサービス」を提供開始したと発表した。
サービスの利用には、理研との共同研究契約が必要で、用途は量子計算などの研究開発の推進/発展を目的とした非商用利用に限られる。利用者は契約締結後、どこからでも無料で超伝導量子コンピュータを利用できる。
同研究グループは、「20世紀の量子コンピュータは、縁の下の力持ちのような立ち位置だった。21世紀の量子情報科学は、今回のサービス提供をきっかけに表舞台に立ち、国内の量子情報の研究に関わる人材育成や、情報技術分野を基幹とした国内産業が発展すると期待している」とコメントした。
今回発表された超伝導量子コンピュータは、量子ビットを64個並べた64量子ビットの集積回路が使われていて、「2次元集積回路」と「垂直配線パッケージ」という2つの特長がある。
2次元集積回路では、正方形に並べられた4個の量子ビットが、それぞれ隣り合う量子ビットをつなぐ「量子ビット間結合」で接続されていて、正方形の中には、「読み出し共振器」や「多重読み出し用フィルター回路」などが設置されている。今回の64量子ビット集積回路は、4量子ビットの正方形を16個(機能単位)並べて構成され、2cm角のシリコンチップの上に形成されている。
担当者は、2023年3月27日に行われた記者説明会で、「64量子ビット中、11ビットは不具合があり正常に作動していない。量子ビットごとの活用が可能なため、サービス利用に大きな影響はないが、53量子ビットでのスタートとなる」と説明した。
垂直配線パッケージは、2次元平面に配置された量子ビットへの配線をチップに対して垂直に結合させるパッケージ方式だ。また、量子ビット集積回路チップへの配線を一括で接続できる配線パッケージも採用することで、個々の量子ビットに対する制御や読み出し用の配線が整理され、今後の大規模化に際しても基本設計を維持できる。
量子ビットを制御するための信号には、マイクロ波の周波数(8G〜9GHz)で振動する電圧パルスが用いられる。しかし、量子ビットごとに異なる周波数のマイクロ波が必要となるため、共同研究グループは、高精度で位相の安定したマイクロ波パルス生成が可能な制御装置および、これを用いて量子ビットを制御するソフトウェアを開発した。開発した量子ビット制御装置は、制御と読み出しのために入力配線96本/出力配線16本を用いて量子計算を行う。
同研究グループは、さらに多くの量子ビットでの量子計算動作を可能にするため、希釈冷凍機内の配線の高密度化などの開発を進めている。将来的には、機能単位の個数を増やすことで、100量子ビット、1000量子ビット、100万量子ビットなどへの拡大を目指す。
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