ニュース
セルロースナノファイバー、2025年に75億円規模へ:矢野経済研究所が世界市場を調査
矢野経済研究所は、セルロースナノファイバー(CNF)世界市場を調査し、生産量および出荷金額の予測を発表した。
自動車など用途拡大に向け、耐衝撃性の改善を最優先に
矢野経済研究所は2023年4月、セルロースナノファイバー(CNF)世界市場を調査し、その結果を発表した。2023年見込みは生産量が85t、出荷金額が59億6000万円である。これに対し2025年はそれぞれ115t、75億2000万円に達すると予測した。
今回の調査で対象としたのは、CNFとCNFを添加剤や強化材などに用いた各種製品(試作やサンプル供給分含む)。調査期間は2023年1〜3月。CNFは植物に含まれるセルロース繊維をナノサイズまで解繊したもの。化学的解繊法や機械的解繊法、水衝突解繊法といった方法で、セルロース繊維からCNFを取り出すという。
CNFが開発された当初は、「強度は鉄の5倍、重量は鉄の5分の1」という特性から、自動車や家電製品といった用途での採用が注目されていた。ところが、CNFと樹脂を複合した材料(CNF複合樹脂)の一般的な耐衝撃性は2〜4kJ/m2程度である。自動車内装部品では10〜12kJ/m2程度の耐衝撃性が求められるため、現状ではその用途が化粧品や食品、スポーツシューズなどに限定されているという。
現在、国内のCNFメーカーが有するCNFの年間生産能力は、合計で1070tである。2023年の世界生産量に対し設備稼働率は約8%と低い。需要拡大に向けて、CNF複合樹脂メーカーは、耐衝撃性の改善を最優先として開発に取り組んでいるという。一方、エンジンルーム内のユニット部品などでは現状の耐衝撃性でも対応できるため、採用される可能性が高いと分析している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- MEMSデバイス、2025年には約2兆円の市場規模に
矢野経済研究所の調査によれば、ファウンドリーを除いたMEMSデバイスの世界市場規模は、2025年に約2兆円の市場規模となる見通しだ。 - 車載ディスプレイ部材、出荷量はプラス成長続く
矢野経済研究所は、車載ディスプレイ部材の世界市場を調査し、車載タッチパネルやディスプレイカバー(前面板)など主要部材の出荷量について、その成長率を予測した。主要部材の出荷量は今後も続伸が見込まれる中で、曲面や大画面、高精細化に対応した部材のニーズが高まる見通しだ。 - 照明用半導体レーザー、2030年に8755億円規模へ
矢野経済研究所は、照明に用いられる半導体レーザーの世界市場を調査し、その一部を発表した。出荷金額(メーカーの出荷ベース)は、2022年の5897億1000万円に対し、2030年には8755億円規模になると予測した。 - 高機能フィルム市場の成長率、2022年は足踏み状態
2022年の高機能フィルム市場は、応用機器メーカーの生産調整などにより成長率が鈍化し、足踏み状態にある。今後は5G(第5世代移動通信)関連向けなどの需要が拡大し、2023年には市場が回復する見通しである。矢野経済研究所が調査した。 - LCD-TFTパネル向け偏光板、2021年比7.1%の増加
矢野経済研究所は、偏光板と部材フィルムの世界市場を調査した。LCD-TFT/AMOLED向け偏光板の2022年生産量は、6億6550万m2になると予測した。2021年に比べ7.1%の増加になる。 - 車載用LiBの廃棄量は9万トン、回収量は想定を下回る
矢野経済研究所は2022年2月15日、リチウムイオン電池(LiB)のリユースおよびリサイクル動向についての調査結果を発表した。