味覚の定量的なセンシングとその巨大な意義:福田昭のデバイス通信(397) 2022年度版実装技術ロードマップ(21)(2/2 ページ)
「味覚」の概要を取り上げるシリーズの続き。本稿では、味覚を定量的に検出する「味覚センサー」とその意義について解説する。
世界初の味認識装置を1993年に九州大学とアンリツが共同で開発
多分日本で最も早くから味覚センサーの開発に取り組んできたのは、九州大学高等研究院で特別主幹教授をつとめる都甲潔(とこう・きよし)氏だろう。九州大学工学部電子工学科を1975年に卒業し、1977年に同大学大学院修士課程を修了した都甲氏は1980年に九州大学工学部の助手となる。1980年代に味覚センサーの研究を始め、味細胞の換わりとなる「人工脂質膜(脂質と可塑剤、高分子を混合した膜)」を開発した。
1989年には計測機器メーカーのアンリツと味覚センサー装置の共同開発を始め、1993年には世界で初めての実用的な味認識装置「SA401」を完成させる。1996年には第2世代である「SA402」、2000年にはその改良版である「SA402B」を開発する。2007年には現在の主力製品である「TS-5000Z」を開発し、販売を始めた。
またこの間、2002年4月にアンリツから味覚センサー事業を分割し、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー(insent)を設立した。同社の代表取締役社長は、アンリツで研究開発を担当していた池崎秀和(いけざき・ひでかず)氏がつとめている。また上記の沿革は、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジーのウェブサイトに掲載された記述に基づく。
株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー(insent)が九州大学の都甲教授らと共同で開発した味認識装置「TS-5000Z」の外観。右下は操作用のタッチパネル[クリックで拡大] 出所:株式会社インテリジェントセンサーテクノロジーのウェブサイト
味認識装置にはこのほか、慶應義塾大学理工学部の研究成果をベースとしたAISSY(アイシー)株式会社(2008年設立)が開発した「レオ」、フランスのAlpha MOS(1992年設立)が2000年に開発した「ASTREE」などがある。
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