「におい」を定量的に評価する技術:福田昭のデバイス通信(399) 2022年度版実装技術ロードマップ(23)(2/2 ページ)
今回は、複雑で抽象的な存在である「におい」を定量的に評価する手法を取り上げる。
ヒトと機器の両方から「におい」を定量化する
「におい」を定量化(数値化)する手法には、大別すると「嗅覚測定法(官能試験法)」と「成分濃度表示法(機器分析)」がある。
「嗅覚測定法(官能試験法)」は、ヒトの嗅覚を利用して「におい」を測定する方法を指す。「官能評価」と呼ぶことも多い。「におい」には単位がないので、強さや快・不快さ、濃さなどは全て相対値で表記する。
官能試験法による「におい」の強さは、数字による6段階の強度表示である「6段階臭気強度表示法」で表現することが多い。具体的には、最低の「0(ゼロ)」(においを感じない)から最強の「5」(強烈なにおい)まである。なお悪臭防止法では、2.5〜3.5の臭気強度を規制基準としている。
「6段階臭気強度表示法」の段階表示(筆者注:この表はロードマップ本体には掲載されていない)[クリックで拡大] 出所:岩崎好陽、「臭気の測定方法」、『大気汚染学会誌』、第27巻第2号、1992年、p.A20
それから「におい」のよしあしは認容性あるいは嫌悪性とも呼ばれており、奇数段階の数字による「快・不快度表示法」を使って示すことが多い。奇数段階には5段階、7段階、9段階がある。国内では9段階の快・不快度表示が広く使われている。基準は「0(ゼロ)」で、「快でも不快でもない」。基準からマイナスで4段階の不快さ、プラスで4段階の快さを表示する。
「9段階快・不快度表示法」の段階表示(筆者注:この表はロードマップ本体には掲載されていない)[クリックで拡大] 出所:岩崎好陽、「臭気の測定方法」、『大気汚染学会誌』、第27巻第2号、1992年、p.A20
臭気濃度と臭気指数
官能試験法による「におい(臭気)」の強さは、「臭気濃度」および「臭気指数」を使って表現することも少なくない。臭気濃度とは、におい(臭気)を清浄な無臭の空気で希釈したときに、においが消失する(無臭になる)までにどのくらいの希釈倍数が必要かで定義する。例えば1000倍に希釈して初めて無臭になったときは、臭気濃度は1000となる。なお6段階臭気強度表示法の3.0は、臭気濃度では30前後に対応するとされる(岩崎好陽、「臭気の測定方法」、『大気汚染学会誌』、第27巻第2号、1992年、p.A20)。
臭気指数は、臭気濃度を常用対数の10倍で表現したもので、ヒトの感覚に近い変化を示す。臭気指数の10は臭気濃度の10、臭気指数の30は臭気濃度の1000に等しい。
続きとなる「成分濃度表示法(機器分析)」と「におい」センサーは次回に解説する予定だ。しばし、お待ちいただきたい。
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