ISPU内蔵の6軸MEMSセンサー、STマイクロ:5分の1の消費電力で演算
STマイクロエレクトロニクスは2023年4月25日、同社のインテリジェント センサー処理ユニット内蔵の6軸MEMSセンサーに関する記者説明会を実施した。
STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は2023年4月25日、インテリジェント センサー処理ユニット(ISPU)内蔵の6軸MEMSセンサー「LSM6DSO16IS」「LSM6DSO16ISN」「ISM330IS」「ISM330ISN」(以下、ISPUシリーズ)に関する記者説明会を実施した。同製品は、従来マイコンで行っていた信号処理やAI(人工知能)アルゴリズムの処理を、センサー内で行うことで、従来の汎用マイコンに比べて約5分の1の消費電力で演算ができる。
同シリーズは、従来製品では民生機器向けにしか搭載されていなかった自己構成機能(ASC:Adaptive Self-Configuration)を備えていて、マイコンをスリープ状態にしたまま、測定範囲や動作周波数などを、状況に応じて独自に設定することができる。
パッケージは、同社従来製品と同じ2.5×3.0×0.83mmの標準パッケージを使用している。設計を刷新し、対象のアプリケーションに特化した設計にすることで、既存のパッケージサイズのまま、省電力でAIアルゴリズムを実行できる。アプリケーションは、産業機器やコンシューマー機器での使用を想定している。
数分で機械学習ライブラリの作成が可能
「LSM6DSO16ISN」「ISM330ISN」は、簡単に機械学習ライブラリを作成できるSTの無償ツール「NanoEdge AI Studio」に対応している。ライブラリは、対象機器が設置された場所でオンデバイス学習が可能だ。トレーニング時間内(数十秒〜数分)に学習した正常データを学習し、学習結果と新しく入力されたデータを比較することで分析を行う。操作手順は、NanoEdge AI Studioが表示されているPC画面上に出てくるため、その手順に従うだけでトレーニングを完了できる。
NanoEdge AI Studioは、簡単に機械学習ライブラリを作成できる反面、機械学習ライブラリのカスタマイズを行うことは出来ない。機械学習ライブラリのカスタマイズを希望する場合は、NanoEdge AI Studioを使用できない代わりに、設定のカスタマイズが可能なLSM6DSO16IS、ISM330ISの使用を推奨している。
学習/開発に必要なデータは無償で提供
ISPUシリーズは、2022年6月から販売開始されていて、2023年1月に開催された「第15回 オートモーティブ ワールド」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)の同社ブースで展示された、AIを搭載した車載用6軸慣性モジュール「ASM330LHHX」でも使用されていた。
同社は、今回の記者説明会を実施した理由について、「2022年6月の提供開始時点では、ハードの提供のみで、開発や評価に必要なソフトウェアの提供準備が整っていなかった。今回、開発や評価に必要な環境が整ったため、販促強化のタイミングだと考えている。例えば、センサー機能の評価やステートマシン、ディシジョン・ツリーの作成に使用する『Unico-GUI』やファームウェアなどのエコシステムは、全て無償で提供する。利用を希望する場合は、GitHubからダウンロードできる」と説明した。
生産能力は、ISPUシリーズの4製品全体で1日当たり600万個ほどだ。また、現在増設中のアグラテ(イタリア)工場(2023年内完成予定)が稼働開始すると、生産能力が約20%向上する想定だ。
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