Applied、40億ドルで米国に半導体R&D施設を新設へ:半導体企業が内部にパイロットライン設置
Applied Materialsは最大40億米ドルを投じ、米国シリコンバレーの同社敷地内にR&D施設を新設すると発表した。施設では半導体メーカー各社が専用スペースを構え、次世代プロセス/装置の早期提供を受けることが可能になるという。
Applied Materials(以下、AMAT)は2023年5月22日(米国時間)、今後7年間で最大40億米ドルを投じ、米国カリフォルニア州シリコンバレーの同社敷地内に研究開発(R&D)施設「Equipment and Process Innovation and Commercialization Center」(以下、EPICセンター)を新設すると発表した。施設は2026年前半に完成予定で、内部には半導体メーカー各社が専用スペースを構え、次世代プロセス/装置の早期提供を受けることが可能になるという。また、2036年までに250億米ドル以上の企業R&D投資も見込んでいる。
半導体メーカーや大学との協働進める
設立の背景には半導体需要の拡大に伴う課題がある。半導体製造が「オングストローム(10-10/0.1nm)時代」に入ると、現在より桁違いに複雑な基礎製造技術が求められる。これに伴いR&Dや製造のコストが上昇する一方で、新規技術の開発から実用化、量産までに要する期間はさらに長くなると考えられている。同時に技術者不足やCO2排出量の削減なども課題となっている。AMATは、こうした課題を解決するためにR&Dへの新たなアプローチが必要であるとし、業界全体のネットワークを強化するプラットフォームとしてEPICセンターを設計することを決定したという。
EPICセンターは、18万平方フィート(約1万7000m2)という大規模なクリーンルームを備え、ロジックやメモリの主要メーカーが製造装置エコシステムと協業を進めるプラットフォームとなる予定だ。センター内には、半導体メーカー各社が専用スペースを構える予定で、各社は自社のパイロットラインを拡張し、次世代技術や装置に早期にアクセスすることが可能になるという。AMATは、「(チップメーカー各社は)自社施設に同等の機能を導入する場合に比べ、利用開始を数カ月ないし数年も前倒しできる」と述べている。
また、大学とのパイプも強化する狙いだ。大学の研究者らは大規模な研究所やハードウェアといった最新鋭の設備を利用できる機会が少なく、アイデアを実用化する妨げになっている。AMATは同センターや同社が管理する学内サテライトラボで、大学研究者らに産業規模の各種設備へのアクセスを提供し、アイデアの妥当性確認、イノベーションの成功率向上、新技術の実用化にかかる時間とコストの削減などの面から支援。同時に人材育成にもつなげていく方針だ。
AMAT社長兼CEO(最高経営責任者)であるGary E. Dickerson氏はEPICセンター設立について、「グローバルな業界コラボレーションの在り方を変革し、ハイパフォーマンスコンピューティングの改善に不可欠な基礎半導体プロセスや製造技術を実現する絶好の機会となるだろう」と述べている。
EPICセンターは、今後設立される全米半導体技術センター(NSTC)との連携も視野に設計されている。なお、今回AMATが示した投資規模は、CHIPS and Science Act(通称:CHIPS法)に基づく助成が得られることを前提としたものだという。
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