CXLはデータセンターの「救世主」となるのか:AIの普及で負担が増大
AI(人工知能)の普及でデータ量が爆発的に増大し、データセンターにかかる負担が増加する中、その課題解決の鍵はCXL(Compute Express Link)インタフェースが握っている。
AI(人工知能)とビッグデータが今後、コスト削減や洞察の解放、想像を超える効率化などを実現することにより、地球上のほぼ全てのビジネスを変化させていくであろうことは間違いないだろう。当然ながら投資家たちは、こうした分野に資金を投入しているが、AI/ビッグデータの普及を実現する上で最も重要になる部分を軽視してきたことから、HPC(高性能コンピューティング)やデータセンターに膨大な負担がかかり、さらに悪化させているという状況にある。
最新のCXL(Compute Express Link)技術は、CPUのメモリ空間と接続デバイスのメモリとの間のメモリコヒーレンシを維持する。CXLは、コンピューティング業界を新たな時代へと前進させ、中でも特に高性能化やシステム全体のコスト削減などを実現することが可能だ。
CXLはデータセンターにとって、増大する負担に耐えるだけでなく、将来に向けた準備を整えていくための、唯一の実行可能な答えだといえる。賢明な投資家たちは、ここ数カ月の間に、増大するデータ需要とそれに伴うCXLに対する高揚感の高まりを垣間見てきたことから、ソリューションおよび投資機会の両方としてのCXLの潜在的な可能性を認識していくだろう。
AIの普及でコンピューティングシステムに膨大な負担が
IBMによると、AIの世界市場は現在急成長を遂げており、2023年現在の普及率は、2022年比4ポイント増となる35%だという。AIは、人々の生活を一変させようとしている一方で、既存のコンピューティングシステムに対して膨大な負担をかけており、データセンターは増大するデータに迅速に対応する必要がある。
メモリは、データセンターの全てのトランザクションの中核を成し、インフラの中で最も高額な部分だが、その大半が十分に活用されていないという状況にある。この問題は、今後さらに大きくなっていくだろう。現在利用可能な技術では、データセンターが引き続き同じシステムを使用していく場合、より多くのメモリインタフェースを利用する必要がある。
この場合、データセンターはさらに多くのメモリにアクセスしながら、超高速で動作し続けなければならないため、“持続不可能”なソリューションだといえる。そこで、メモリを活用するための新しい手法が必要だ。CXL技術は、デジタル時代の増大する需要に対応しようとしているデータセンターに対し、メモリ使用率の向上とシステム性能の最適化を実現するためのエキサイティングな機会を提供する。
「CXLは、増大するテールレイテンシ(ハイパーセンタイルのレイテンシ)の問題を乗り越えられるのか」という疑問が生じているために、この技術の本当の可能性に対する誤解を招いている。
テールレイテンシは現在、ますます大きな問題になりつつある。時代遅れのストレージソリューションや、増大する需要、ワークロードの変化などといったさまざまな課題によって引き起こされる可能性がある。CXLがこの問題に対応できるのかどうかについて臆測が広がっているが、それは初期段階のソリューションが、実際の性能値を示さずに機能性のみに焦点を当てていたからだ。
だが、CXLの新興企業であるUnifabriXは、低レイテンシで高速なメモリプーリングをサポートするCXLソリューションを開発し、メモリ帯域を追加してレイテンシの課題を解決している。同社のCXLの成果は、業界のベンチマークと比較して測定されている。
こうした進歩は、CXLがその前身であるPCIe(PCI Express)とは一線を画し、この技術がコンピューティング業界が待ち望んでいたソリューションであることを示している。
CXL技術は、Intel、AMD、Arm、Google、Microsoft、Amazon、Dell、Lenovo、Samsung Electronicsなどの大手コンピュータメーカーを含む、多くの業界リーダーによって支持されている。メモリ性能を向上させたCXL技術は、5年以内にコンシューマー向けプラットフォームに登場するという見方もある。
データセンターのインフラは今日、あらゆる産業で活用されている。経済情勢にかかわらず、増大する需要に対応し、不況やインフレに強い技術になるよう進化しなければならない。CXLへの投資は、データセンターの将来にとって極めて重要だといえるだろう。
※筆者のLior Handelsman氏は、Grove Venturesのゼネラルパートナーである。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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