RISC-Vのソフトウェア強化に向けたプロジェクトが始動:弱点克服し、Armの牙城を崩す(2/2 ページ)
Linux Foundationの欧州部門Linux Foundation Europeが2023年5月、「RISC-V Software Ecosystem(RISE)」プロジェクトの創設を発表した。Armの牙城を崩すべく、RISC-Vアーキテクチャ向けのオープンソースソフトウェア開発を加速させていく計画だ。
「ソフトウェアが弱い」という問題の解消へ
Tirias ResearchのアナリストであるJim McGregor氏によると、RISC-Vに関連する製造リスクについても既に解消されているという。
RISC-Vコアを使用するMCUやSoC(System on Chip)設計の多くは生産に入っていて、新しいプロセッサアーキテクチャによく見られる生産の遅れや製品の再設計のような、コストのかかる重大リスクはなくなっている。現在、複数のベンダーがRISC-Vプロセッサコアを提供中だ。設計者は、Armやx86プロセッサでは不可能な、独自のプロセッサコアの開発も可能だ。EDAツールベンダーと主要な半導体ファウンドリーは全て、RISC-Vコアをサポートしている。
それにもかかわらず、RISC-Vの活動は、それ以前の数え切れないほどのプロセッサアーキテクチャを半世紀にわたって苦しめてきたのと同じ、「ハードウェアは意欲的だが、ソフトウェアが弱い」という問題に悩まされている。
Armが過去30年間で獲得したマイクロプロセッサにおけるリーダーシップの側面の一つは、大規模なエコシステムの構築にある。Armは当然のことながら、同社のエコシステムを誇りに思っている。同社は、エコシステムによってArmベースのプロジェクトの開発コストを50%削減できると見積もっている。これは真実味のある数字だ。
大規模なエコシステムでは、開発チームがプロジェクトを成功させるために必要な技術的な道を、すでに誰かが経験済みである可能性が高い。つまり、大規模なエコシステムは、プロジェクトのリスクの軽減に役立つ。そして、Armのエコシステムは非常に規模が大きい。
RISEプロジェクトに取り組むメンバーは、資金面でプロジェクトに貢献することを約束し、RISE技術運営委員会が優先順位を付けた特定のソフトウェアの開発に従事するエンジニアリング人材(フルタイムエンジニア2人相当)を提供する必要がある。
RISEプロジェクトの目的は、RISC-V ISAをベースにしたアプリケーションプロセッサ専用の堅ろうなソフトウェアエコシステムの発展を促進することだ。これには、ソフトウェア開発ツール、仮想化サポート、言語ランタイム、Linuxディストリビューションの統合、システムファームウェアなどが含まれ、既存のオープンソースコミュニティーと協力し、オープンソースのベストプラクティスを採用する。これらの目標は、RISC-V ISAが持つオープンソースの本質と合致している。
AndroidがRISC-Vをサポート
注目すべきは、Googleが同プロジェクトの運営委員会に参加し、Android OSのRISC-V ISA対応に取り組むという点だ。AndroidはAppleを除くほぼ全ての携帯電話設計に採用されているOSであり、Android OSは組み込み用OSとしても人気が高まっている。
GoogleのAndroidのエンジニアリング担当ディレクターであるLars Bergstrom氏は、今回のプレスリリースの中で、Android OSがRISC-Vをサポートすることに言及している。また、Huffman氏は、Googleのプリンシパルエンジニアでもある。
これらの取り組みによって、直ちにArmが『絶滅』に向かうことはないだろう。
Armが最も得意とする市場、つまり携帯電話や組み込み市場では、Armは圧倒的な先行者利益を得ている。Armはこれらの市場に非常に深く根付いている。そして、これらの市場の多くのセグメントは、既存のアーキテクチャであっても、新しい製品設計への移行に非常に時間がかかるものだ。
RISC-VがArmのプロセッサコアの市場シェアを奪い始めるには、まだ数年かかるかもしれないが、ArmがIPOに向けてライセンス料を増やし、ロイヤリティーを高めようとしている今、RISC-Vが拡大を続けることは明らかだろう。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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