1つのCPUを作って「完コピ」、Appleの理想的なスケーラブル戦略:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(74)(3/3 ページ)
Appleのプロセッサ「M2」シリーズが出そろった。今回は、そのM2シリーズの解析結果から、Appleのチップ開発戦略をひもといてみよう。
1つのCPUを完成したら、コピーする
テカナリエは、Appleのチップをほぼ全て入手し、開封して解析を行っている。CPU、GPU、インタフェースなどの主要な部品は全て、配線層を剥離して内部のトランジスタを見えるようにして、写真を撮っている。
M2シリーズのハイパフォーマンスCPUは「iPhone」向けの「A15 Bionic」と同じものであることが明らかになっている。M1シリーズは「A14 Bionic」をベースにしたものだ。1つのCPUを完成させて、コアをコピーして性能を拡張するという、理想的なスケーラブル開発を行っているわけだ。
次世代の「M3」は3nm世代の製造プロセスを採用するとウワサされているが、「A16 Bionic」(4nm世代の製造プロセスを適用)をベースにするならば、4nmを適用する可能性もあると思われる。
いずれにしても、そうしたウワサや予想は、実物がいずれ手に入れば明らかになるので、実物を待ちたい。Apple M2シリーズでは、CPUだけでなくGPUやNE(Neural Engine)など多くの基になる機能回路はAシリーズのものをコピーし、個数を増やして使っている。ベースを開発し、コア数を変えて、スーパーハイ、ハイ、ミドルハイ、ミドル、ローを作り上げているわけだ。便宜上「ロー」という用語を使っているが、本当にローエンドというわけではなく、実際にはハイエンド内での段階分けである。
図4は、AppleのA15 Bionic、M2、M2 Pro、M2 Maxの関係である。図中の赤枠内はハイパフォーマンスCPUのコア数、緑枠はGPUのコア数である。
iPhone向けのA15 BionicのCPU、GPUのコア数を2倍にしたものがM2だ(ただしディスプレイなどの想定が異なるので、ペリフェラル機能や接続される機能も異なり、インタフェースは別物となる)。M2のCPUコアを2倍、GPUをほぼ2倍、ほぼ4倍にしたものがM2 Pro、M2 Maxとなっている。リリース順に開発されたのではなく、当初から4チップが同時に開発されている可能性は高い。いずれにしても、出荷個数が最も多いAシリーズから立ち上げ、徐々にハイエンドをリリースしてくるAppleのスタイルは、「iPad」向けのAシリーズの過去から一貫したものになっている。今後のM3、M4もほぼ同じスタイルであるものと思われる。
Apple製品を凌ぐスーパープロセッサ
テカナリエは、他にも多くのプロセッサを入手して、解析を行っている。AMDの「3D V-Cache」を搭載した「Ryzen」や、Intelの新生代「Xeon」などである。Intelの「Xeon w9-3495X」や「Xeon w7-2495X」はAppleを凌ぐスーパープロセッサである。パッケージボール数は5000近い。また1パッケージ内にFPGAも組み込まれている。シリコンサイズもモンスター級である。図5は、Xeon w7-2495Xのパッケージ、図6はシリコンの様子である。
半導体はコア数を増やし、シリコン同士を組み合わせ、まだまだ進化を続けていく。2023年から2024年にかけて次世代3nmなど新プロセッサが続々とリリースされる。くまなく観察していきたい。
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