“大学城下町“構想で「企業は大学を活用して」:新規事業立ち上げや人材育成でも(2/2 ページ)
東京工業大学の副学長で産学官連携担当を務める大嶋洋一氏が、OMDIA主催のイベントで講演を行った。半導体業界の研究開発において大学のポテンシャルが十分に活用されていないことを指摘し、大学と企業が集い技術を発展させる「大学城下町」の構想など、産学連携のさらなる可能性について語った。
先端半導体分野での人材育成の取り組み
日本における半導体分野の産学連携では人材育成を重視した取り組みが多いことから、大嶋氏は大学における半導体製造の実習環境整備の重要さを訴え、現在文部科学省が進めている「次世代X-nics半導体創生拠点形成事業」(以下、X-nics)の取り組みを紹介した。
X-nicsは、2035〜2040年ごろの社会で求められる半導体の創生を目指し、アカデミアの中核的な拠点を形成するプロジェクト。2022年から10年間、エネルギー効率が高く高性能な半導体創生に向けた研究開発と将来の半導体産業をけん引する人材の育成を、両輪で推進していくという。X-nicsには、チップのアジャイル開発プラットフォームを創出して設計期間と試作費用を10分の1に、設計人口を10倍にすることを目指す「Agile-X」(東京大学)や、若手研究者や学生も参画して集積回路の省電力化に向けた技術などの研究を行う「スピントロニクス融合半導体創出拠点」(東北大学)、環境負荷の低い半導体実現に向けた研究と人材育成を推進する「集積Green-niX研究・人材育成拠点」(東工大)が採択されている。大嶋氏は企業に対し「こうしたナショナルプロジェクトの動向に注目し、積極的に課題を提供するなど、研究開発の方向性において貢献してほしい」と語った。
大嶋氏は「半導体業界では『人が足りない』という声があるが、企業には大学という組織を上手に活用してもらいたい。われわれも産業界に貢献できたらと思っている」と改めて呼びかけ、講演を締めくくった。
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