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強まる自動車の環境規制、先進国は2050年のカーボンニュートラルが共通目標福田昭のデバイス通信(410) 2022年度版実装技術ロードマップ(34)(2/2 ページ)

前回に続き、第2章第5節の第3項(2.5.3)「電動化技術」の概要を紹介する。その中から、世界における自動車の環境規制動向に相当する部分を解説する。

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温室効果ガス(GHG)排出量の算定対象範囲(バウンダリ)

 自動車の排気ガス削減と言えば、従来は燃費(燃料当たりの走行距離あるいはその逆数)を基準とすることが多かった。この基準はGHGプロトコル(GHG排出量の計算方法と報告方法を定めた国際基準、炭酸ガス排出量で表現する)によると、「TtW(Tank to Wheel)」と呼ぶ算定対象範囲(バウンダリ)に相当する。

 しかし日本では最近、「WtW(Well to Wheel)」と呼ぶ、算定範囲を広げたバウンダリをGHG排出量の評価に2030年から使用することを決めた。WtWは従来のTtWに、エネルギーを生成するために必要なGHG排出量「WtT(Well to Tank)」を加えた評価方法である。

 欧州および中国では、素材製造や部品製造、車両組み立てによって生じるGHGと、使用後の廃棄・リサイクルに必要なGHGをWtWに加えるLCA(Life Cycle Assessment)の利用を検討している。日本は東日本大震災に伴う原子力発電所(原発)の大事故により、全国の原発で一時期は稼働を停止したという経緯があり、LCAの導入には慎重な姿勢を採らざるを得ない、という事情がある。

自動車における温室効果ガス(GHG)排出量の算定対象範囲(バウンダリ)
自動車における温室効果ガス(GHG)排出量の算定対象範囲(バウンダリ)[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)

欧州におけるガソリン車と電気自動車のLCA研究報告

 英国の自動車技術コンサルティング企業Ricardoと欧州委員会は、自動車の環境影響をLCAによって評価する研究を共同で実施し、研究報告書を2020年9月に公表した。この報告書「Ricard(2000)」では、透明性があって利用可能な文献とデータセットに基づきLCA手法を構築するとともに、政策立案者に対する提案と将来に向けた勧告を盛り込んだ。

算定対象範囲(バウンダリ)の違いによる、ガソリン車と電気自動車の温室効果ガス(GHG)排出量(Ricard(2000)から)
算定対象範囲(バウンダリ)の違いによる、ガソリン車と電気自動車の温室効果ガス(GHG)排出量(Ricard(2000)から)[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)

 「Ricard(2000)」によると、自動車1台当たりの炭酸ガス排出量(CO2e)は、バウンダリによってかなり違う。「TtW(Tank to Wheel)」ではガソリン車が39.5トン、電気自動車はゼロである。「WtW(Well to Whell)」になると、ガソリン車が52.3トン、電気自動車は14.5トンに増加する。「LCA」では、ガソリン車が60.3トン、電気自動車が29.8トンとなる。炭酸ガス排出量の比較で電気自動車が最も良く見える算定範囲は「TtW」であり、最も差が小さくなる算定範囲は「LCA」であることが分かる。

⇒(次回に続く)

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