GaAs/InP系化合物半導体、民生用途が市場を加速へ:iPhoneでの採用も
フランスの市場調査会社Yole Groupは2023年7月、ガリウムヒ素(GaAs)およびインジウムリン(InP)系化合物半導体に関する市場分析を発表した。同社は民生アプリケーションへの採用拡大が両市場の成長を加速するとしている。
フランスの市場調査会社Yole Group(以下、Yole)は2023年7月、ガリウムヒ素(GaAs)およびインジウムリン(InP)系化合物半導体に関する市場分析を発表した。同社は民生アプリケーションへの採用拡大が両市場の成長を加速するとしている。
GaAsはコスト面/小型化の利点で再躍進
Yoleによると、2023年第1四半期、データ通信および電気通信市場は、主に過剰在庫とハイパースケーラーおよびクラウドサービスプロバイダーからの光トランシーバー需要の低迷によって急減速。データ通信および電気通信インフラの主要部品であるInP系レーザーを手掛けるメーカーは過剰在庫を抱え、InPデバイスメーカーおよび基板サプライヤーは、受注減とマイナス成長率に直面しているという。
一方で、GaAsはデータ通信用途のVCSEL(垂直共振器面発光レーザー)では同様に在庫の課題を抱えるものの、コスト面や小型化においてInPをしのぐメリットを有することから、民生用途で再躍進することが予想されているという。
Yoleによると、GaAsフォトニクスは長らくデータ通信アプリケーションにけん引されてきたが、2017年にAppleが「iPhone X」に採用したことから、現在は3Dセンシング用VCSELが最大のアプリケーションとなっているという。メーカーは、コスト効率の優れた大量生産実現のため、現在6インチのGaAsウエハープラットフォームを使用。GaAフォトニクスダイの2022年の市場規模は18億3000万米ドルで、6年後の2028年には倍増することが予測されている。
GaAsフォトニクス市場ではLumentumとCoherent(II-VIが買収、合併)の2社が高いシェアを有している。AppleのサプライヤーであるLumentumは過去数年間でファウンドリーやエピタキシーパートナーらとパートナーシップを築く一方で、CoherentはM&Aを通じて垂直統合を実施している。なお、エピウエハー市場では、IQEが主要サプライヤーとして支配的な地位を占めている。
InPも、スマホの近接センサーでの活用が加速
InP市場については、帯域幅とデータ転送速度、到達距離において高性能の光トランシーバーの実現に寄与することから、データ通信および電気通信が主要な市場のけん引役であることに変わりはないという。足元では低迷しているものの、Yoleの分析によると、InP市場は2022年の30億米ドルから2028年には64億米ドルにまで成長することが見込まれている。
ただ、Yoleは1300nmや1500nm付近の短波長赤外でのセンシング用途におけるInP活用について、関心が高まっているとも強調。既にイヤフォンやスマートフォンの近接センサーにInPを採用する大手民生機器メーカーが目立ってきているという。
Yoleは、「注目すべきはAppleが『iPhone 14 Pro』のノッチサイズをピル型に縮小し、一部センサーをOLEDディスプレイの下に組み込んだことだ。この変更は、GaAs VCSELをInP端面発光レーザー(EEL)に置き換えたことが含まれる。これは、GaAsの主要プレイヤーがInP市場に参入する機会を開くものだ」と述べている。
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