低電圧、高速駆動の超音波アクチュエーター素子:クロステーブルやグリッパーに活用
TDKは「TECHNO-FRONTIER 2023」(2023年6月26〜28日/東京ビッグサイト)で、超音波アクチュエーター素子「PUS(Piezo for Ultrasonic Stator)シリーズ」を展示した。入力電圧振幅は±10V。駆動速度は最大250mm/秒で、「入力電圧の低さと駆動速度は業界内でも上位に位置する」という。
低背化/軽量化を実現
TDKは「TECHNO-FRONTIER 2023」(2023年6月26〜28日/東京ビッグサイト)で、超音波アクチュエーター素子「PUS(Piezo for Ultrasonic Stator)シリーズ」を展示した。
PUSシリーズは、「電圧を加えると変形する」という圧電セラミックスの特性(逆圧電効果)を利用して電気信号を物理的な運動に変換し、さまざまな機器の動作に活用するための製品だ。PUSシリーズの外形寸法は8×2.2×1.9mmと小型で、活性層につながる外部電極は片側3個、両側で6個。PUSシリーズの外部に接触子を接着して用い、電圧を加える活性層に応じてPUS素子が変位し、接触子を介して摺動(しゅうどう)部材が「右」や「左」に動く仕組みだ(下図)
入力電圧振幅は±10Vと低電圧駆動を実現。また、駆動速度は最大250mm/秒、推力は0.45N、電力は0.8Wとなっている。TDKの担当者によると「入力電圧の低さと駆動速度は業界内でも上位に位置する」という。
ブースでは、タブレット端末で作画したデータを作図するプロッターの動作に同製品を活用したデモを展示していた。PUSシリーズはXY軸のクロステーブルに2個、ペンを上下動させるスライダーに1個、紙を送るスライダーに2個、計5個利用している。
TDKの担当者はさらに、圧電セラミックスを利用したアクチュエーターの特長として「磁石を使用しない分、電磁式のモーターと比較して、低背化/軽量化が可能だ。また、磁界が発生しないため磁力の影響を受けやすい機器のある医療現場でも使用できる。さらに、ダイレクトドライブが可能なことから、回転運動だけでなく直線運動も変換ギアなしで行える」と強調していた。
PUSシリーズの用途としてはクロステーブルやグリッパーなどを想定する。同製品は既に開発が完了していて、早ければ2024年度以降、量産に移行できる段階だという。
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