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インタビュー

「DXがアナログ半導体の需要を加速する」 ADI日本法人社長 中村氏シグナルチェーンの出入り口を担う(2/2 ページ)

2020年11月、Analog Devices(ADI)の日本法人、アナログ・デバイセズの代表取締役社長に就任した中村勝史氏。コロナ禍を経て、中村氏は「産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)により、アナログ半導体の需要は増す」と見ている。中村氏に、アナログ・デバイセズの戦略を聞いた。

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アナログ・デバイセズが注力する3つの分野

――アナログ半導体の需要はこれからも増えるということで、ADIの日本法人としての戦略をお聞かせください。

中村氏 大きく3つの分野に焦点を当てる。車載機器、インダストリアル、デジタルインフラだ。

 自動車は、中国の新興メーカーが台頭するなど変化が激しい市場ではあるが、現在も日本の自動車メーカーの存在感は強く、トレンドセッターにもなっている。アナログ・デバイセズとしては、特に電動化と電子化に焦点を当てていく。

 自動車の電動化と車載システムの電子化により、パワートレインやコックピットなど、自動車の内外は大きく変わる。半導体の搭載量も、今後数年で約3倍に増加するともいわれている。アナログ半導体メーカーにとって、自動車市場はそれだけビジネス機会が大きいことになる。

 産業分野は、60年近いADIの歴史において最も注力してきた領域だ。日本でも、医療関連を含めれば売上高の半分以上を産業向けが占めていて、顧客数も非常に多い。DXが進めば、この分野がさらに後押しされることになる。日本は、世界的に見てもかなり早い段階で産業革命や機械化が起きた国だ。ただ、日本はメンテナンス能力にも優れているが故に、非常に古いモーターなどが、まだまだ現役で稼働している工場も多い。これらを新しいモーターに変えるだけでも、エネルギー消費が抑えられる。モーターなどの世代交代や入れ替えが進めば、ADIのソリューションを提供するチャンスも増える。

 デジタルインフラでは、5G(第5世代移動通信)と医療にフォーカスする。最先端の半導体製品は民生機器で使われることも多いが、今後はそれらをデジタルインフラにも展開するようになるだろう。

 市況についても、アナログ半導体はバックオーダーがあり、ロジックやメモリほどスローダウンしていない。用途別では、民生機器が減速傾向にあるものの、産業インフラでは業界の先行投資が続いている。さらに、アナログ半導体市場におけるADIのシェアは、日本市場でのみ首位を獲得している。これらを考慮すると、半導体業界において当社はかなりいい立場にいるととらえている。

アナログに詳しくなくても使えるソリューションを

――ADIに求められているアナログソリューションとは、どのようなものだとお考えですか。

中村氏 ソフトウェア/システム技術者などアナログ半導体にそれほど詳しくない技術者でも使えるようなソリューションを提供していく。細かいアナログ技術周りはソフトウェアの記述や変更で対応できるようなソリューションが必要だ。こうしたソリューションがあれば、システム技術者は「問題解決のためのアプリケーションを開発する」という仕事に専念できる。そのために、ADIは今、デジタル技術者をかなり増やしている。

――プロセッサやメモリなどのデジタル半導体は、比較的進化が分かりやすい分野ですが、アナログ半導体の「進化」とは何だとお考えですか。

中村氏 アナログ半導体そのもののスペックを上げていくことは重要だが、それよりも「顧客が、何の課題を解決したくてアナログソリューションを使うのか」を徹底的に考えることが重要だ。

 医療であれば、これまで1日かかっていた画像診断を、数時間でできるようにする。そのために、どんなアナログ半導体やソリューションを開発し、提供すればよいのか。そこを突き詰めて製品を開発することこそが、「アナログ半導体の進化」といえるのではないか。

 スペックをベースにアナログ半導体を設計することよりも、アプリケーション上の課題を理解し、その解決につながるソリューションを提供するというのが、当社が果たすべき役割だ。

――中村さんにとって、アナログ半導体や、アナログ半導体メーカーの魅力とは何でしょうか。

中村氏 顧客に最も近い立場でイノベーションを起こすことができるという点だ。アナログ技術は、課題解決につながる“一番の近道”を提供できる。そこが大きな魅力なのではないか。

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