最大25セル対応、車載向けバッテリー監視チップセット:バッテリーパックの小型化に貢献
ヌヴォトン テクノロジージャパンは、同社の第4世代品となる最大25個の直列バッテリーセルを管理できるEV(電気自動車)バッテリー制御向け新チップセットを発表した。同製品は、バッテリーマネジメントIC(BMIC)の他、新製品のパック監視IC、通信ICで構成されている。
ヌヴォトン テクノロジージャパン(以下、NTCJ)は2023年8月29日、同社の第4世代品となるEV(電気自動車)バッテリー制御向け新チップセットを発表した。同製品は、同社従来製品と比較して25%増となる最大25個の直列バッテリーセルを管理できる。
バッテリーマネジメントIC(BMIC)は「KA84950UA(25セル対応)」「KA84930UA(20セル対応)」の2種があり、パック監視IC「KA84917UA」と通信IC「KA84922UA」とともに使用することでバッテリー監視システムが構成できる。ICの提供開始時期は、BMICおよび通信ICが2023年9月、パック監視ICが2024年1〜3月を予定し、チップセットだけでなく各IC単体での購入も可能だ。
同製品は、「業界最多水準」(同社)となる25個の直列バッテリーセルに対応可能なため、大容量化と高出力化に対応するバッテリー監視システム(BMS)を少ない部品で構成することができ、バッテリーパックの小型化、軽量化に貢献する。
同チップセットは、安全性の高い冗長測定システムを採用している。冗長測定システムとは、電気的に分離された2系統の測定システムを使用し、電池セル電圧および電池パック電流の入力端子からADコンバーターまでの測定を二重に行う仕組みだ。また、チップセットの各IC間を通信するデイジー通信は双方向リング通信に対応しているため、1つの通信経路に異常が発生した際でも、他方の通信経路を使用した通信が可能だ。これにより、自動車メーカーやバッテリーパックメーカーは、ISO26262 ASIL-Dに準拠した車載バッテリーシステムを容易に開発、設計できる。
BMIC単独で駐停車時の電池を監視し、異常検知時には通信ICを経由してバッテリー監視システムのホストマイコンを起動できる機能も備える。これにより、駐停車時にホストマイコンをスリープさせ、バッテリーから消費されるシステム電力を最小限に抑えられる。BMICとパック監視ICは誤差10マイクロ秒以下の同期動作に対応する。電圧/電流情報を同時に取得できるため、電池の充電状態(SOC:State of Charge)や劣化率(SOH:State of Health)の推定も可能だ。
同社は、同チップセットや各製品の販売目標については「非公開」(同社)としつつ、「EV(電気自動車)市場規模が2030年までに現状の4倍に拡大するという予測を踏まえ、車載向けIC事業の売上高も現状の4倍に成長させたい」(同社)とコメントした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 電池の残量を正確に測るIC、ヌヴォトンが展示
ヌヴォトン テクノロジージャパンは2023年3月に開催された「第14回 国際二次電池展(春)」で、機器に搭載されているリチウムイオン電池の残量を測定するバッテリーマネジメントIC(BMIC)のデモを披露した。 - EVの航続距離延長に効く、ADIの最新バッテリー監視IC
アナログ・デバイセズは「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」で、最新の車載バッテリー監視ICを展示した。セル電圧の測定誤差が低いので、バッテリー残量をより正確に把握できるようになる。 - 電圧検出応答は10マイクロ秒、車載用バッテリー監視IC
エイブリックは2023年3月22日、車載用高耐圧バッテリーモニタリングIC「S-19114シリーズ」を販売開始したと発表した。電圧検出応答時間(36V動作)は、同社従来製品比で20分の1となる最大10マイクロ秒で、「業界最速」(同社)だという。 - TI、バッテリーセル/パックモニターICを発表
テキサス・インスツルメンツ(TI)は、車載用バッテリー管理システム(BMS)に向けたバッテリーセルモニターIC「BQ79718-Q1」および、バッテリーパックモニターIC「BQ79731-Q1」を発表した。 - 複数機能の統合を実現する車載リアルタイムプロセッサ
NXP semiconductors(以下、NXP)は、ドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2022」(2022年6月21〜23日において、車載用リアルタイムプロセッサや産業/IoT(モノのインターネット)エッジ機器向けMCUの新製品に関するデモを展示した。