光学式フレキシブル圧力センサーシートを開発:3軸方向の圧力を検知できる
東京大学は、3軸方向の圧力を検知できる「光学式フレキシブル圧力センサーシート」の開発に成功したと発表した。曲面への実装が可能で、ロボットの電子皮膚やヘルスケアなどでの応用を視野に入れる。
ロボットの電子皮膚やヘルスケアなどに応用
東京大学大学院工学系研究科のHaoyang Wang大学院生、李成薫講師、横田知之准教授、染谷隆夫教授らは2023年9月、3軸方向の圧力を検知できる「光学式フレキシブル圧力センサーシート」の開発に成功したと発表した。曲面への実装が可能で、ロボットの電子皮膚やヘルスケアなどでの応用を視野に入れる。
従来の圧力センサーは、垂直方向の圧力のみを検知するのが一般的であった。今回開発した圧力センサーシートは、「フレキシブル面光源」と「フレキシブル感圧ゴムシート」および、「フレキシブルイメージャー」の3層からなる。このシートに圧力が加わると光強度分布が変化する。この変化をフレキシブルイメージャーで検出すれば、「垂直方向の圧力」と「せん断応力の分布」を計測できるという。
圧力センサーシートを構成するフレキシブル面光源は、光導波路にポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いた。その表面には、酸化チタンナノ粒子を分散させた拡散層と銀による反射層を成膜。これによって均一な面光源を実現した。フレキシブル感圧ゴムシートは、厚みが0.8mmという多孔質のPDMSシートを用いた。これにより、センサー感度を向上させた。
開発した圧力センサーシートの特性を評価した。この結果、垂直方向の圧力に対して最小で1キロパスカル(kPa)、最大で360kPaまでの圧力を検知できた。せん断応力に関しても最小で0.6kPa、最大で100kPaの圧力まで検知できることを確認した。さらに、5mmの格子状に配置した6×8のセンサーアレイを用い、垂直方向の圧力とせん断応力の圧力分布を同時に計測できることを実証した。
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