フラットパネルディスプレイの進化を支えるデバイスの基礎:福田昭のデバイス通信(420) 2022年度版実装技術ロードマップ(44)
今回から、第2章第6節「新技術・新材料・新市場」の2番目のテーマである「次世代ディスプレイデバイス」について解説する。
ディスプレイの平面パネル化が広範囲の需要を発掘
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介してきた。
本コラムの前々回から、第2章第6節(2.6)「新技術・新材料・新市場」の概要を説明している。前々回と前回は、最初のテーマである「2.6.2 エネルギー」の内容を簡単に紹介した。今回から、2番目のテーマである「2.6.3 次世代ディスプレイデバイス」の概要をご説明していく。
「2.6.3 次世代ディスプレイデバイス」は、以下の項目で構成される。「2.6.3.1 ディスプレイデバイス概要」「2.6.3.2 超大型ディスプレイ(LEDビデオウォール)」「2.6.3.3 TV向けディスプレイ」「2.6.3.4 タブレット・スマートフォン・ノートPC向けディスプレイ」「2.6.3.5 自動車用ディスプレイ」「2.6.3.6 XR対応HMD(Head Mounted Display)」である。
非発光型の液晶パネルと発光型の有機ELパネルがいくつかの応用分野で競合
「2.6.3 次世代ディスプレイデバイス」の項目からすぐに理解できることは、電子ディスプレイの応用範囲が極めて広くなっていることだ。いずれも平面ディスプレイ(フラットパネルディスプレイ)であり、数多くの要素技術を駆使することによって用途別のディスプレイを実現している。
フラットパネルディスプレイ(透過型)を発光方式で大別すると、デバイスが光の透過率を制御するシャッターとして機能する「非発光型」と、デバイスが発光素子でその輝度を電子的に制御する「自発光型」に分かれる。「非発光型」の代表は液晶ディスプレイ(LCD)である。光源(バックライト)の白色光をデバイス(液晶)のシャッターによって一部だけ透過させ、色フィルター(RGBの3原色の中でどれかを透過するフィルター)を通じてディスプレイの画素(表示単位)とする。バックライトには普通、発光ダイオード(LED)を使う。
「発光型」の代表はLEDディスプレイと有機ELディスプレイ(一般的には「OLEDディスプレイ」と呼ばれる)である。LEDディスプレイはRGBの3原色を発光するLED(赤色(R)LEDと緑色(G)LED、青色(B)LEDのどれか)を一つの画素とする。LEDは通常、パッケージに封止されているのでかなりの大きさ(数ミリ角程度)がある。このため、比較的大きな業務用のディスプレイに使われることが多い。
OLEDディスプレイ(有機EL)は有機材料を発光デバイスとする。発光原理はエレクトロルミネセンス(励起されたキャリアが元の状態に戻るときに光を放出する現象)である。有機ELの発光原理はpn接合ダイオードの発光と近いので、有機材料を使ったLEDの意味で「OLED」と呼ぶことが多い。有機ELパネルは液晶パネルに比べると薄く、消費電力が低く、解像度を高めやすい。スマートフォンやノートPC、デスクトップPCモニター、テレビ受像機などのハイエンド品から、液晶ディスプレイを置き換えつつある。
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