地球温暖化で変革を迫られるエネルギーの需給構造:福田昭のデバイス通信(418) 2022年度版実装技術ロードマップ(42)
今回から、第2章第6節(2.6)「新技術・新材料・新市場」の概要を紹介していく。この節では、エレクトロニクス産業で注目を集めているテーマを取り上げる。
「新技術・新材料・新市場」で注目のテーマを解説
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
本コラムの第406回(シリーズ第30回)から前回(第417回)までは、第2章第5節(2.5)「モビリティー」の概要を説明してきた。今回から、第2章第6節(2.6)「新技術・新材料・新市場」の概要を紹介していく。
「新技術・新材料・新市場」は実装技術ロードマップの「特設コーナー」とでも表現すべき節で、エレクトロニクス産業で注目を集めている、いくつかのテーマを解説してきた。例えば「2019年度版」(前回版)の「新技術・新材料・新市場」では「サーマルマネジメント」「次世代ディスプレイ〜マイクロLED〜」「次世代通信 5G」の3つのテーマを取り上げていた。今回の「2022年度版」では、テーマが5つに増えた。「エネルギー」「次世代ディスプレイデバイス」「ロボット」「量子技術」「接合技術」である。「次世代ディスプレイ」以外は、新しいテーマに換わった。
2050年に向けて日本の電力エネルギーは供給と需要がともに増加
ここからは「2.6.2 エネルギー」の概要をご説明していく。日本のエネルギー供給と需要は基本的に人口に依存することから、現在は漸減トレンドにある。総エネルギー供給は2013年度が5.46兆kWh(出所:経産省の第6次エネルギー基本計画による実績)、2030年度が4.42兆kWh(出所:経産省の第6次エネルギー基本計画による予測)、2050年度が3.29兆kWh(出所:JEITA予測)と推定した。
総エネルギー需要は2013年度が3.73兆kWh、2030年度が2.88兆kWh、2050年度が2.06兆kWhと同様に予測した。なお供給と需要の差分は基本的に熱となって捨てられている(熱損失)。
総エネルギー量は減るものの、電力エネルギーが占める比率は増加傾向にある。ロードマップでは、総エネルギー需要に占める電力エネルギーの比率は2013年度が25%、2030年度が約30%、2050年度が約60%と予測した。
この結果、日本の電力需給は供給エネルギーでみると2013年度の9397億kWhから2030年度には9300〜9400億kWhと横ばい、2050年度には1兆3000億〜1兆4000億kWhに増加する。需要エネルギーは2013年度の9896億kWhから、2030年度には8640億kWhと減り、2050年度には1兆2360億kWhと増加する。
日本の電力需給予測。2050年にカーボンニュートラルを実現する前提で推定したもの。グラフ上部にある黒字の数値は電力供給量、赤字の「需要比率」は日本の総エネルギー需要に占める電力の比率。グラフ下部にある需要は「電力需要」の値[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)
ここで問題となるのは、電力供給を2050年度には2013年度に比べて4000億kWh前後を積み増さなければならないこと、2050年のカーボンニュートラルを実現するには電力供給の60%を再生可能エネルギー(再エネ)で賄う必要があることだ。再生可能エネルギーとは自然界に存在するエネルギーのことで、発電に利用されているエネルギーには、太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスなどがある。
発電量に占める自然エネルギーの割合は2022年に約23%
特定非営利法人環境政策エネルギー研究所が2023年4月14日に発表したデータ「2022年の自然エネルギーの割合(暦年・速報)」によると、2022年の日本国内全発電量に占める自然エネルギーの割合は22.7%であり、前年(2021年)と比べて0.3ポイント増とわずかな上昇にとどまった。
全体に占める割合では太陽光が最も大きく9.9%であり、次いで水力が7.1%、バイオマスが4.6%、風力が0.9%、地熱が0.2%となっている。
2022年に再エネが占める比率が23%ということは、2050年までに再エネ比率を3倍近くに増やさなければならないことを意味する。達成は容易ではない。
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