業界標準のパイオニアを表彰、フラッシュメモリサミット:Amber Huffman氏(3/3 ページ)
2023年8月に開催されたフラッシュメモリに関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」の主催者は、Intelでの初期段階の取り組みから始め、重要な業界標準規格を定義/推進してきたAmber Huffman氏に、生涯功労賞を授与した。
NVMeの普及が「キャリアで最も重要なマイルストーン」
Huffman氏は2007年に、NVMHCI(NVM Host Controller Interface)ワークグループを設立し、ONFIとの互換性を備えたフラッシュモジュールで使用するクライアントキャッシングインタフェースを定義した。クライアントキャッシングの商業的な成功は限定的なものだったが、2009年にPCI Express(PCIe)SSDが登場したことにより、同氏は「Enterprise NVMHCI」を利用してこれらのSSDを主流派にするためのチャンスを得ることができた。この取り組みは、SSD接続規格「NVMe」の実現へとつながっていく。同氏はその方向性を主導し、2017年まで仕様作成責任者を務めた。そして現在も、NVM Expressのプレジデントとして組織を率いている。
この他にもHuffman氏による注目すべき標準規格関連の取り組みとしては、M.2フォームファクターなどのストレージフォームファクターの開発を主導したことが挙げられる。同氏は2017年に、EDSFF(Enterprise and Data Center SSD Form Factor)ワーキンググループを設立し、議長を務め、指揮を執った。汎用コネクターをベースとしたフォームファクター規格や、システム要件に基づいた幅広いレングスをサポートする機能を定義する取り組みを進めている。
今後の展望「さらに拡大している」
Huffman氏は、「NVMeは、クラウドだけでなく、最終的にはAI(人工知能)/ML(機械学習)のビルディングブロックであることから、NVMeの幅広い普及こそが、自分のキャリアの中で最も重要なマイルストーンの一つだと考えている」と述べる。
同氏は、「新たに登場した生成AIは、SSDなしでは実現し得なかっただろう。自らが取り組んだものによって、社会インフラの中で現代社会が実現されていく様子を見られるのは、本当に素晴らしいことだ」と述べている。
「生涯功労賞については、そろそろスピードを落とすべき時が来たという合図だとは思っていない。私にはまだやることがある。われわれが団結することで、エコシステムが物事を変えられるということを、本当に感謝している」(Huffman氏)
また同氏は、「ONFIとNVMeは、数多くの注目点のたった2つにすぎない。Googleに移動したことで、今後の展望がさらに拡大している。メモリやストレージの枠を超えた、はるかに大きな視野が広がっているのだ」と述べる。
同氏は、特にIntelでの入社当初、精神的に安心できる環境を作ってくれる人々に囲まれていたという幸運についても語っている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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