「LEDがない」フォトカプラ、絶縁性能は40年持続:置き換えるだけで製品寿命を延長(2/2 ページ)
Texas Instruments(TI)が、フォトカプラとピン互換性を持つ絶縁ICの新製品を発表した。信号の送信回路/受信回路によってフォトカプラの機能を模擬するもので、LEDを搭載していない。LEDの経年劣化による絶縁性能の低下がなくなるので、システム全体の絶縁寿命を延ばせるという。
消費電力を80%削減、高速なデータレートも実現
「フォトカプラ エミュレータはこうした課題を解決すべく、開発された製品だ」とTIの担当者は述べる。
フォトカプラ エミュレータでは、IFのスレッショルドの引き下げと電源電流の低減により、フォトカプラよりも消費電力を最大80%削減した。同相電圧過渡耐性(CMTI)は、デジタル出力のISOM8710で150kV/μsと、一般的なデジタルフォトカプラの約15kV/μsよりも大幅に高い。そのため、同相スイッチングノイズやリンギングノイズが大きいアプリケーションでも使用できる。
データレートが速いことも特長だ。既存の高速デジタルフォトカプラの1M〜10Mビット/秒(bps)に対し、ISOM8710のデータレートは25Mbpsを実現している。アナログ出力のISOM8110は、680kHzと広い帯域幅を実現しているので、インダクターやトランスのサイズを小型化することが可能だ。動作温度範囲は、ISOM8110が−55〜125℃、ISOM8710/8711が−40〜125℃と、いずれもフォトカプラより広い。
フォトカプラ エミュレータでは、複数のパッケージオプションを用意している。最小サイズは4.8×3.5mmになっている。評価基板も19米ドルで購入可能だ。2024年には車載バージョンも投入する見込みだという。
TIは、フォトカプラ エミュレータの開発背景について「まだまだ市場で多く使われているフォトカプラから置き換えるだけで、システムの絶縁強度と絶縁寿命を上げられることを目指した」と語る。「極端なコーナーケースはあるかもしれないが、基本的には『置き換えるだけ』で済むので、設計の工数や負担を増やすことなく、絶縁寿命の延長を実現できるだろう」(TI)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 車載事業が拡大するTI、EVの効率化をトータルで支援
Texas Instruments(TI)は、自動車の電動化が急速に進む中で、未来のクルマに求められる「航続可能な距離の最大化」や「充電時間の短縮」などにつながる半導体デバイスの開発と安定供給に力を入れる。 - 300mm半導体ファブ生産能力、2026年は過去最高に
世界の300mm半導体前工程ファブの生産能力が、2026年には月産960万枚まで増加し、過去最高となる予測をSEMIが発表した。2023〜2026年には82の新規300mmファブ/ラインが稼働を計画しているという。 - TI、マイコン/組み込みプロセッサ群を拡充
Texas Instrumentsは2023年3月、2つの組み込みプロセッサ製品ファミリを発表した。 - TIがユタ州リーハイに300mm対応工場を新設へ
Texas Instruments(TI)は、過去最大規模となる110億米ドルを投じて、ユタ州リーハイの300mm対応工場を拡張する。 - ガルバニック絶縁ハイサイドスイッチ、STが発表
STマイクロエレクトロニクスは、診断制御や保護機能を備えたガルバニック絶縁ハイサイドスイッチ4製品を発表した。ノイズの影響を受けやすいPLCや産業用PC、CNC装置といった用途に向ける。 - 低温で硬化するドライフィルム状の感光性絶縁材料
太陽インキ製造は「JPCA Show 2023」で、半導体パッケージの再配線層での使用に向けた感光性絶縁材料を展示した。低温で硬化するため硬化時の基板の反り返りを緩和できるほか、材料自体の表面が平滑であるため処理工程を減らすことができるという。