レドックスフロー電池、二酸化炭素を活物質化:化合物に触媒技術を応用
産業技術総合研究所(産総研)は、触媒により二酸化炭素を活物質化し、これを利用した「レドックスフロー電池」を、京都大学と共同で開発した。さまざまな化合物に触媒技術を応用すれば、新たな材料開発につながる可能性が高いとみている。
充放電は最低50回、クーロン効率は90%超、比放電容量は最大1.5 AhL-1
産業技術総合研究所(産総研)省エネルギー研究部門エネルギー貯蔵システムグループの兼賀量一主任研究員と大平昭博研究グループ長らは2023年10月、触媒により二酸化炭素を活物質化し、これを利用した「レドックスフロー電池」を、京都大学人間・環境学研究科の山本旭助教らと共同で開発したと発表した。さまざまな化合物に触媒技術を応用すれば、新たな材料開発につながる可能性が高いとみている。
レドックスフロー電池は液循環型の二次電池で、定置用大型蓄電池として期待されている。出力部(電解セル)と蓄電容量部(電解液タンク)が独立しているため、電池セルの設計自由度が高く、大型化が容易である。ただ、これまでは活物質が金属イオンや有機分子に限られていたこともあり、電解液のコストやエネルギー密度に課題があったという。
産総研はこれまで、レドックスフロー電池および、活物質の開発に取り組んできた。また、二酸化炭素をギ酸塩やメタノールなどに変換できる触媒技術についても研究を行っており、極めて高い触媒性能を有する「イリジウム錯体」を開発してきた。そこで今回は、安定かつシンプルな化合物である二酸化炭素を、触媒によって活物質とすることで、レドックスフロー電池に応用できるかを検証した。
具体的には、イリジウム触媒を介した二酸化炭素とギ酸塩のレドックス(酸化還元反応)を負極に、マンガンの2価と3価のレドックスを正極に、それぞれ用いたレドックスフロー電池を開発した。これを用いて充放電の動作を検証した。充電時は、負極で錯体触媒を介して二酸化炭素がギ酸塩に還元され、正極でマンガンが2価から3価へと酸化された。放電時には、負極で錯体触媒を介してギ酸塩が二酸化炭素に酸化され、正極でマンガンが3価から2価に還元されることを確認した。
触媒構造や充放電条件を最適化したところ、最低50回の充放電が可能となった。クーロン効率(放電電気量/充電電気量)は、安定的に90%を超え、比放電容量は最大1.5 AhL−1が得られた。
研究グループは、充放電中における錯体触媒の電子状態を、その場でX線吸収分光測定し解析した。この結果、錯体触媒が特異的に4価の高原子価状態で作用していることが分かった。充電時には錯体触媒が還元され、活性種として4価のヒドリド種が生成される。そして、ヒドリド種が二酸化炭素を還元してギ酸塩が作られ、錯体触媒は再生される。放電時にはギ酸塩からヒドリド種が作られ、ヒドリド種が酸化されることで、錯体触媒が再生されていることを確認した。
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