「民生から産業へ」、25周年を迎えたBluetoothの新しい活路:将来的には5GHz/6GHz帯対応も(2/2 ページ)
Bluetooth SIGが、1998年9月の設立から25周年を迎えた。ワイヤレスオーディオから普及が始まったBluetooth技術は、今や産業用途でも活用されている。Bluetooth SIGのCMO(最高マーケティング責任者)を務めるKen Kolderup氏は東京で開催された記者説明会で、Bluetooth技術のこれまでを振り返るとともに、今後の進化についても語った。
民生用途から産業用途へ
ワイヤレスオーディオやコネクテッドコンシューマーエレクトロニクスに加え、ここ最近は産業向けにも注力してきたとKolderup氏は説明する。ビルの照明制御システム、物流倉庫などでの資産追跡、店舗で使われる電子棚札(ESL:Electric Shelf Label)システムなどで、Bluetoothの活用が進む。
「2023年において、産業分野向けのBluetooth搭載機器の出荷台数は、2億台以上と予想している。ワイヤレスオーディオやコネクテッドコンシューマーエレクトロニクスに比べれば少ないが、最近のBluetooth技術の進化は、むしろ産業向けで歓迎されるようなものだった」(Kolderup氏)
一例としてBluetooth 4.0では、新しいトポロジーとしてメッシュネットワークを採用。この「Bluetooth mesh」によって、BA(ビルディングオートメーション)や資産追跡などに、Bluetoothのアプリケーションが広がった。Bluetooth 5.1では、信号の受信角度であるAoA(Angle of Arrival)、放射角度であるAoD(Angle of Departure)を活用した方向検知機能が使えるようになった。特に屋内で高精度に位置測位ができることから、さまざまな分野の位置情報サービスで活用されるようになっている。2023年2月に発表された最新バージョンのBluetooth 5.4では、双方向通信が可能な新しい通信方式「PAwR(Periodic Advertising with Responses)」が導入された。これにより、店舗などで1台の端末と多数のESLが双方向で通信する、といった使い方ができるようになる。
5GHz/6GHz帯の高周波対応も
Kolderup氏は、今後の技術進化の方向性も示した。Kolderup氏は、測位精度の向上、データスループットの向上、高周波数帯への対応を挙げた。
測位については、現在は「20mの距離で±20cm測位できる」精度なので、今後はさらに精度を上げていく。この高精度測位に対応した規格は2024年前半にリリースされる予定だ。
Bluetooth Low Energy(BLE)では、データスループットの向上と高周波数帯への対応を予定している。現在、BLEの通信速度は最大2Mビット/秒(bps)だが、4倍となる最大8Mbpsに引き上げる。これは2.4GHz帯をベースにした技術だが、さらなる高速化、低遅延に向けて5GHz/6GHz帯への対応を進める。Kolderup氏は、高周波数帯への対応は「Bluetoothの次の25年を支える技術だ」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 成熟Bluetoothチップ市場に吹く新風
世界の至るところで使われるようになった無線技術「Bluetooth」。機器分解を手掛ける筆者も週に2機種のペースでBluetooth搭載機器を分解している。そうした機器解剖を通じて見えてきたBluetoothチップ業界の意外な最新トレンドを紹介しよう。 - Bluetooth市場、LE Audioや照明が成長をけん引
Bluetooth SIGは2021年4月14日、オンライン記者説明会を開催し、Bluetoothの市場動向などを説明した。Bluetooth SIGのマーケットデベロップメント シニア・ディレクターを務めるCuck Sabin氏によれば、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、Bluetooth市場の成長は1年遅れになったものの、2021年から出荷数の増加は回復する」という。 - 安い、早い、簡単! 地図がいらない自律走行ロボット
ロームは「CEATEC 2023」(2023年10月17日〜20日、幕張メッセ)にて、地図を使わずに目的地に向かう自律走行ロボット技術「NoMaDbot」を展示した。従来の自律走行ロボットと比較して低コストかつ短期間での導入が可能だという。 - FDK、超小型のBLEモジュールをサンプル出荷
FDKと東芝は、「Bluetooth Low Energy(BLE)モジュール」に関して技術ライセンス契約を締結した。契約に基づきFDKは、外形寸法が3.5×10mmと極めて小さいBLEモジュールを製品化し、2023年10月より順次サンプル出荷を始める。 - 2mm角のパッケージも、Bluetooth対応SoCとMCU
シリコン・ラボは2023年3月、実装面積に制限があるIoT機器に向けて、Bluetooth対応SoC「xG27ファミリー」と8ビットMCU「BB50」を発表した。いずれも外形寸法が約2mm角から5mm角のパッケージ品を用意した。 - Nordic、デュアルバンドWi-Fi 6チップを発表
Nordic Semiconductorは、消費電力が極めて少ないデュアルバンドWi-Fi 6チップ「nRF7002」を発表した。これにより同社は、「Bluetooth」と「セルラーIoT」に、今回の「Wi-Fi」を加え、3種類の「ワイヤレスIoTテクノロジー」を、1社でカバーすることが可能となった。