新型イメージセンサー歩留まり問題が収益圧迫、ソニーの半導体事業:影響は2024年度にも(2/2 ページ)
ソニーグループのイメージング&センシングソリューション分野の2023年度第2四半期売上高は、前年同期比2%増の4063億円となった。一方、営業利益は同37%減と大幅減の464億円になった。調整後OIBDAも同12%減の1071億円と減益になった。イメージセンサー新製品の歩留まり改善に向けた費用増などが影響した。
車載向けも見通しを下方修正
車載向けでは、自動車市場のサプライチェーン正常化や電動化の進展によって市場全体としては高い成長を維持しているものの、中国市場での競争激化によって一部顧客のシェアが低位にとどまっていることや、大手顧客のADAS(先進運転支援システム)高性能化の進展が「想定より遅れている」(早川氏)ことなどを反映し、2023年度見通しを若干下方修正した。
ただ、十時氏は、車載分野における足元の状況について「自動車市場自体はかなり正常化していて、中長期的な成長目標については変更はない。これ(見通しの下方修正)は極めて一部の自動車メーカーの事情やシェアの変化によるもので、中長期的なトレンドを変えるようなものではない」などと説明していた。
ウエハーベースの生産能力は、2023年度第2四半期が設営ベースで月産13万3000枚(3カ月の平均値)、ウエハー投入枚数は1カ月当たり11万8000枚(同)だった。2023年度第3四半期は設営ベースが月産15万4000枚(同)、投入枚数は1カ月当たり13万7000枚(同)と見込んでいる。
I&SS分野の中長期的な展望については、「モバイルセンサー大判化のトレンドがイメージセンサー市場全体の成長をけん引することに加え、省人化/自動化によって中期的な成長が期待される産業/社会インフラ向けや、車載向けなども、着実に事業拡大が進んでいくとの見方に変更はない」(早川氏)としている。
グループ全体では増収減益、PS5の販売は好調
第2四半期のグループ全体の業績をみると、売上高はI&SS分野の増収のほか、「PlayStation 5(PS5)」の販売増などがあったゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野や、音楽分野、映画分野で大幅増収となった一方、金融分野やエンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野で大幅減収となり、結果、前年同期比8%増の2兆8286億円で着地した。営業利益は同29%減の2630億円、純利益は同29%減の2001億円となっている。この減益は、主に金融分野での減益が要因だ。金融分野では、市況変動による損益悪化の影響に加え、新会計基準IFRS第17号適用に伴い、前年度実績を再計算した影響や、前年同期には不正送金の資金回収221億円があったことなどから、643億円の減益となった。
通期業績については、I&SS分野の他、G&NS分野や音楽分野などで上方修正を行い、結果、グループ全体の売上高は前回予想から2000億円増の12兆4000億円に上方修正している。営業利益は予想を据え置いたが、純利益も同200億円増の8800億円とした。
G&NS分野ではPS5の販売増などから、売上高は前年同期比32%と大幅増の9541億円となった。営業利益もPS5の損益悪化はあったものの、増収影響などから同16%増の489億円に、調整後OIBDAは同29%増の831億円になった。PS5の販売台数は、年間2000万台を販売した2016年度第2四半期の「PlayStation 4(PS4)」販売台数を25%上回る490万台となった。同社は、2023年度販売台数2500万台という目標を据え置き、年末商戦期における拡販施策を進めつつ、「PS5の普及拡大と、収益性とのバランスを取った事業運営を進めていく」としている。
PS5普及と新型センサー歩留まり向上など「最重要課題」
ソニーは、2023年度を最終年度とする現行の中期経営計画のKPIである3年間累計の調整後EBITDA(利払い前/税引き前/償却前利益)が、目標の4兆3000億円の19%増にあたる5兆1000億円になることを見込んでいるという。これは前中期経営計画の最終年度である2020年度実績から年平均約9%で成長する形になる。
十時氏は、「当下半期は、各事業で事業環境への対応と、次期中期計画期間および、それ以降での成長に向けた、基盤の確立に注力していく」と説明。特に、「G&NS分野でのPS5の普及とそれに伴うユーザーベースの拡大、I&SS分野での製品歩留まりの向上やオペレーション効率化などの収益性改善施策を最重要課題として取り組み、悪材料を来年度に積み残すことがないよう、現行中期計画の総仕上げを進めていく」と語った。
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