75% DODで2000サイクル使用できる超小型全固体電池:欧州バッテリー規則にも対応
フランスの小型電池メーカーITEN(アイテン)は、「EdgeTech+ 2023」(2023年11月15〜17日/パシフィコ横浜)に出展し、超小型の全固体電池を展示した。長寿命が特長で、75% DOD(放電震度)で2000サイクル使用できるという。
フランスの小型電池メーカーITEN(アイテン)は、「EdgeTech+ 2023」(2023年11月15〜17日/パシフィコ横浜)に出展し、超小型(4.5×3.2×1.6mm)の全固体電池を展示した。
同製品は長寿命が特長で、75% DOD(放電深度)で2000サイクル使用できる。担当者は「アプリケーションや使い方にもよるが、50% DODでは、75% DODの約10倍の2万サイクル使用できる計算だ。主なアプリケーションは、スマートリングなどのディスプレイ表示のないウェアラブルデバイスを想定していて、同用途では10〜20年使用できる見込みだ」と説明した。充電開始1分で50%充電でき、5分後には80%充電できる。シンプルな充電回路のため、電力管理ICなどは必要ない。
100μAh品は既に量産していて、2023年12月には250μAh品の量産も開始する予定だ。また、2024年末までに、10mAh品の開発を目指している。全て自社工場で生産していて、出荷予定数は、2023年末の時点で年間3000〜4000万個、2025年には第2工場が完成し、年間1.5億個になる見込みだ。
会場では、太陽光発電で得た電力を同社の全固体電池に蓄電し、その電力を使って温度/湿度を計測するモジュールが展示された。
同製品は、2023年8月に欧州で発効された「欧州バッテリー規則(EU Batteries Regulation)」にも対応している。同規制は、バッテリー製品のライフサイクル全体を対象としたもので、カーボンフットプリントの申告義務や、廃棄バッテリーの回収率やリサイクルなどに関する条項が盛り込まれている。
担当者は「欧州では既に採用している企業もあるが、日本国内での販売実績はまだない。国内企業向けのサンプル提供を行っているので、展示会を機に認知度を高め、いろいろな企業に試してもらいたい」と語った。
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