レゾナックが米国に新開発拠点、半導体各社と共創強化へ:米国の先端半導体コンソーシアムにも参画
レゾナックは2023年11月22日、都内で会見を開き、後工程の開発拠点を米国シリコンバレーに新設すると発表した。さらに、Intel、AMDらで構成される先端半導体コンソーシアムに、日本メーカーとして初めて参画することも明らかにした。
レゾナックは2023年11月22日、都内で会見を開き、後工程の新開発拠点「パッケージングソリューションセンター」(以下、米国PSC)を米国シリコンバレーに設立すると発表した。2019年に川崎市に新設したPSCに続き、2拠点目となる。GAFAM(Google、Apple、Facebook[現Meta]、Amazon、Microsoft)や米国の大手半導体企業が集まるシリコンバレーに拠点を置くことで、各企業との共創を強化する他、最先端半導体パッケージング技術の最新コンセプトやトレンドをリアルタイムに捉え、材料開発に反映することなどを目的としている。
PSCは、材料/製造装置メーカーとの共創により、2.5次元/3次元パッケージングなどの先端プロセス技術や材料技術の研究開発を行うオープンイノベーション施設。川崎市のPSC(以下、新川崎PSC)には、2023年は、上半期までの6カ月間で世界150社から訪問があったという。
レゾナック CSO(最高戦略責任者)の真岡朋光氏は、米国PSCについて「場所や規模、投資金額などの詳細は未定で、2024年初頭をめどに検討を進めている。その後、2024年内にクリーンルームの設置や装置の導入、米国PSCの試験運用を開始。2025年内には本格運用を開始する計画だ」と説明した。また、具体的な企業名は「非公開」としつつも、半導体製造装置メーカー、半導体材料メーカー、ファブレス半導体メーカーなど、多岐にわたる企業と共創に関する会話を進めていることを明かした。
米国PSCに導入する設備については「未定」としつつ、「新川崎PSCと完全に一緒となるかは分からないが、最先端機器を導入することになるだろう」(真岡氏)とコメントした。
米国PSCの設立を決めた背景について、真岡氏は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、レゾナックは、米国企業との連携強化に向けて、新拠点設立のための情報収集を行ってきた。昨今、GoogleやMetaを含め、各社がAI(人工知能)半導体の開発を強化している。日本は、高性能なAI半導体の開発に不可欠な材料分野で強みを持っていて、世界からの注目度が高い。2022年9月に米国のハリス副大統領が来日した際には、レゾナックを含むいくつかの半導体材料メーカーに対して、米国拠点新設の誘いもあった。このような市場動向も加味し、米国企業との共創の場として、PSCの設立を決めた」と語った。
米国先端半導体コンソーシアムに参画、材料/非米国企業として「初」
併せてレゾナックは、米国テキサス州にある先端半導体コンソーシアム「Texas Institute for Electronics(以下、TIE)」に参画が決定したと発表した。TIEに戦略パートナーとして参画するのは、材料メーカーとしても非米国企業としても、レゾナックが初めてになるという。
TIEは、半導体の技術ロードマップを5年(世代としては2世代か、それ以上)短縮することを目的とした組織で、Intel、AMD、Micron Technology、Applied Materialsなどが戦略パートナーとして参画している。2024年後半には、2.xDおよび3D半導体パッケージの試作ラインを立ち上げる計画だ。
参画の背景について、真岡氏は「米国の新拠点設立に向けて調査する中で、2023年初頭に、TIEに参画している、ある企業から声が掛かった。TIEの目指す2.xDおよび3D半導体パッケージの実現には材料技術が欠かせない。レゾナックは、前工程から後工程まで一通りの材料技術や知見を持っているだけでなく、パッケージレベルでの議論ができる。また、半導体パッケージ専門の研究開発組織『パッケージングソリューションセンター』や『JOINT2』の運営実績を評価された」と説明した。
真岡氏は、米国への本格進出に当たって「レゾナックの強みは、材料メーカーとしての技術や実績はもちろんだが、各分野で強みを持つ企業との『共創』を積極的に行っている点にある。シリコンバレーには、GAFAMといったハイパースケーラーや、多くの優秀なスタートアップ企業が拠点を構えている。そのような活気あふれる場所に開発拠点を置くことで、レゾナックも鍛えられると考えている。米国PSCやTIEを通じて米国企業との共創を強化することで、レゾナックは、また一歩『世界トップの機能性化学メーカー』に近づくだろう」と意気込みを語った。
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