回路形成済みウエハーの状態でダイをパッケージするWL-CSP:福田昭のデバイス通信(434) 2022年度版実装技術ロードマップ(58)(2/2 ページ)
今回は第3章第3節第2項(3.3.2)「ウェハレベルパッケージ(WLP)、パネルレベルパッケージ(PLP)、部品内蔵基板」の概要をご説明する。
WL-CSPの仕様変化はゆっくりと進む
WL-CSPはパッケージの外形寸法がシリコンダイとほぼ等しい。外部端子はアレイ配置である。正方配列のアレイだと端子ピッチの実用限界は現在のところ0.3mmでかなり短い。例えば3mm角のシリコンダイで端子ピッチが0.3mmだと、正方配列で9行9列となるので最大で81ピンをレイアウトできる。これは相当に高い密度だと言える。
WL-CSP(Wafer Level-Chip Size Package)のロードマップ(2021年〜2031年)。「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)から筆者が抜粋した(p.357)[クリックで拡大]
「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)に掲載された2021年〜2031年のロードマップによると、現在(2021年)のWL-CSPパッケージは最大で11mm角、端子ピッチは最短で0.3mm、端子密度は最大で12ピン/mm2、再配線層(RDL)の配線ピッチは10μm、再配線層の層数は最多で3層である。これが2031年には、12mm角、0.2mmピッチ、18ピン/mm2、6μmピッチ、3層になると予測する。
WL-CSPは比較的小さなシリコンダイをウエハーレベルで一括処理することにより、パッケージングのコストを最小化する。主流となるWL-CSPの仕様はシリコンダイの大きさが5mm角程度、RDLの層数は1層、RDLの配線ピッチは30μmとかなり緩い。従って最大や最小などの仕様はそれほど変わらず、10年を経過してもわずかな変化にとどまる可能性が高い。
ただしミリ波領域(5G[第5世代移動通信]ミリ波と6G[第6世代移動通信]の移動体通信システムが利用する周波数領域)の送受信用半導体は、RDL部分の誘電体に「低誘電率と低誘電損失、低吸水率」を兼ね備えた材料を採用するようになる。
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