クラウドベースのソフト開発環境、ルネサスが構築:車載AIシフトウェア開発を加速
ルネサス エレクトロニクスは、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」技術を活用して、車載AIソフトウェアの開発や評価が行える開発環境「AI Workbench」を構築、2024年1月より限定プレビュー版の提供を始める。
実チップの完成前から、ソフトウェア開発が可能に
ルネサス エレクトロニクスは2023年12月、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」技術を活用して、車載AIソフトウェアの開発や評価が行える開発環境「AI Workbench」を構築、2024年1月より限定プレビュー版の提供を始めると発表した。実チップが完成する前から、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転に必要なソフトウェア開発が可能となる。
AI Workbenchとして今回リリースするのは、4つの機能ブロック。1つ目は「ハイブリッドコンパイラ(HyCo)」アーキテクチャ。従来のSoC(System on Chip)向けAIコンパイラツールチェーンをアップグレードした。
HyCoアーキテクチャとカーネルライブラリーを用いることで、DSPやNPUなどルネサス製SoCで利用可能な既存のサードパーティ製ハードウェアアクセラレーター用コンパイラだけでなく、広範なAIモデルやONNXツールに対応できる。
2つ目はAIモデルのオンラインテスト環境「NNPerf」である。ハイブリッドAIコンパイラを使ったAIモデルが、ルネサス製SoC上でどのように動作するかを評価できる。AIモデル間のトレードオフやメモリ使用量、レイテンシなどを確認しながら、開発を行うことができる。
3つ目は「ソフトウェア開発環境」。マイクロソフトのコードエディタ「Visual Studio Code(VSCode)」と、ルネサスの車載ソフトウェア開発キット(SDK)が、クラウド上で利用できる。利用者はPC上のウェブブラウザ上で、アプリケーションソフトウェアの開発が行える。
4つ目は「ソフトウェアの評価/検証環境」。「NNPerf」で性能検証を行ったAIモデルを用い、アプリケーションソフトウェアのテストや検証が行える。シミュレーターとして「SILS」や「HILS」なども用意しており、AIアプリケーションソフトウェアの性能評価や動作検証が行えるという。
ルネサスは、2024年第2四半期以降にもAI Workbenchの機能を拡大し、Azure以外の主なクラウドでも利用できる環境を構築していく予定である。また、R-Carコンソーシアムのエコシステムパートナーが提供するツール群についても、クラウドへの統合を検討していく。
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