VB法で6インチβ型酸化ガリウム単結晶を作製:大口径化と高品質化でコストダウン
ノベルクリスタルテクノロジーは、垂直ブリッジマン(VB)法を用い、直径6インチのβ型酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶を作製することに成功した。単結晶基板の大口径化と高品質化により、β-Ga2O3パワーデバイスのコストダウンが可能となる。
大口径化に向けて、信州大学が発案した育成技術を継承
ノベルクリスタルテクノロジーは2023年12月、垂直ブリッジマン(VB)法を用い、直径6インチのβ型酸化ガリウム(β-Ga2O3)単結晶を作製することに成功したと発表した。単結晶基板の大口径化と高品質化により、β-Ga2O3パワーデバイスのコストダウンが可能となる。
パワーデバイス向け材料として、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)が注目されている。β-Ga2O3は、これらの材料に比べさらに大きいバンドギャップエネルギーを有する。このため、電気自動車や鉄道車両、産業機器などの機器に向けた、より高性能のパワーデバイスを実現できる可能性が高い。
ノベルクリスタルテクノロジーはこれまで、EFG(Edge-defined Film-fed Growth)法を用いた単結晶製造技術を開発。既に2インチおよび100mm基板を開発し、研究開発用として販売してきた。しかし、β-Ga2O3パワーデバイスを広く普及させるためには、低コスト化が必須となっており、単結晶基板の大口径化に取り組むことにした。
VB法を用いたβ-Ga2O3単結晶の育成技術は信州大学が発案し、これまで2インチおよび4インチの単結晶を作製している。ノベルクリスタルテクノロジーは、この育成技術を信州大学から引き継ぎ、大口径で高品質のβ-Ga2O3基板を作製することにした。
VB法は、原料を入れたるつぼを温度勾配のある炉内に格納し、原料を溶融させた後にるつぼを引き上げて凝固させる育成方法。このため、るつぼと同じ形の結晶が得られる。るつぼ内の融液を凝固させるため、さまざまな基板の面方位を作製可能という特長もある。また、温度勾配が小さい環境で育成できるため、EFG法などの引き上げ法に比べ、結晶の高品質化が可能となる。ドーパント濃度の面内均一性も向上できるという。
VB法6インチ結晶育成装置を用いて作製した結晶は、種結晶から最終固化部まで透明であり、単結晶であることが分かる。直径が最も広い定径部は6インチ以上であった。
「X線トポグラフィー法」という結晶欠陥評価手法を用い、VB法とEFG法を用いて育成した単結晶基板の品質を、産業技術総合研究所で評価した。この結果、EFG法で作製した基板には、直線状欠陥が高密度に発生していた。これに対しVB法で作製した基板には、直線状欠陥がほぼ発生していないことを確認した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 訪れた「酸化ガリウム時代の幕開け」 FLOSFIA社長
FLOSFIAは、酸化ガリウム(α-Ga2O3)パワーデバイスの開発を手掛ける2011年創業の京都大学発ベンチャーだ。同社は2015年に、酸化ガリウムを使用したSBD(ショットキーバリアダイオード)を「GaO-SBD」というブランド名で製品化し、サンプル提供を開始した。それ以降、量産化に苦しんだものの、ようやく2024年に本格量産を開始するメドが立った。FLOSFIA社長の人羅俊実氏に現在の意気込みを聞いた。 - 三菱電機、ノベルクリスタルテクノロジーに出資
三菱電機は、パワー半導体用酸化ガリウム(Ga2O3)ウエハーを開発、製造、販売するノベルクリスタルテクノロジーに出資した。これを機に、三菱電機はGa2O3を用いたパワー半導体の研究開発を加速していく。 - 酸化ガリウムSBD、高い出力で実機動作を確認
ノベルクリスタルテクノロジーは、酸化ガリウムショットキーバリアダイオード(β-Ga2O3 SBD)を電流連続型PFC(力率改善)回路に搭載し、出力電圧390V、出力電力350Wで正常に動作することを確認した。 - β型酸化ガリウム結晶の格子欠陥を非破壊で検出
ファインセラミックスセンター(JFCC)は、ノベルクリスタルテクノロジーや兵庫県立大学などと共同で、X線の異常透過現象を利用し、厚み約0.7mmのβ型酸化ガリウム結晶内部の格子欠陥を短時間かつ非破壊で全数検出し、可視化することに成功した。 - 酸化ガリウム反転型DI-MOSFETの基本動作を確認
ノベルクリスタルテクノロジーは、しきい値電圧6.6Vで耐圧1kVの酸化ガリウム反転型ダブルインプランティドMOSトランジスタ(DI-MOSFET)を試作し、その基本動作を確認した。今後は特性の改善などに取り組み、2025年の実用化を目指す。 - ノベルクリスタルテクノロジー、ロームから資金調達
ノベルクリスタルテクノロジーは、ロームを引受先とする第5回第三者割当増資を行った。今回の増資で得た資金と、ロームとのパートナーシップにより、β型酸化ガリウムエピウエハーの事業化を加速していく。