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アナログCIM回路でCNNとTransformerの処理を実現:容量再構成型CIM構造を提案(2/2 ページ)
慶應義塾大学は、Transformer処理と畳み込みニューラルネットワーク(CNN)処理を、極めて高い演算精度と電力効率で実行できる「アナログCIM(コンピュート・イン・メモリ)回路」を開発した。自動運転車やモバイルデバイスといったエッジコンピューティングにおいて、AI(人工知能)技術の導入が容易となる。
TSMCの65nmプロセスでCIMを試作
実験では、TSMCの65nmプロセスを用いて、CIMを設計/試作した。試作したチップの性能を評価したところ、Transformerモードで最大1.2TOPS、ピーク電力効率で818TOPS/Wを達成。CNNモードでは最大6TOPS、ピーク電力効率は4094TOPS/Wとなり、同等の演算精度を持つCIMに比べ、電力効率は10倍高くなることが分かった。
従来のアナログCIMに比べ、量子化雑音比(SQNR)は22dB高く、演算精度(CSNR)は13dB高い性能となった。こうしたことから、効率が高く、Transformerでも十分な計算精度を実現した。アルゴリズムではVision Transformer(ViT-S)モデルを用いた時に、CIFAR10データセットで95%という高い正答率になることを確認した。高効率のCNNモードを用いた場合、Resnet-20モデルで同データセットにて91%の精度を達成した。
今回の研究成果については、2024年2月18日より米国で開催された「ISSCC 2024(国際固体素子回路会議)」で詳細を発表した。
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