相変化メモリ向け新材料「テルル化ニオブ」を発見:低融点と高結晶化温度を両立
東北大学の研究グループは、産業技術総合研究所や慶應義塾大学とともに、相変化メモリ(PCRAM)の電力消費を大幅に抑え、高速動作や高温環境での使用を可能にする相変化材料として、二次元層状物質の「テルル化ニオブ(NbTe4)」を発見した。
動作エネルギーは約2桁削減、データ書き換え時間は30ナノ秒
東北大学の研究グループは2023年7月、産業技術総合研究所や慶應義塾大学とともに、相変化メモリ(PCRAM)の電力消費を大幅に抑え、高速動作や高温環境での使用を可能にする相変化材料として、二次元層状物質の「テルル化ニオブ(NbTe4)」を発見したと発表した。
現行のPCRAMは、相変化材料として「GeSb-Te化合物(GST)」を用いている。データの書き換えが数十ナノ秒と速く、耐久性にも優れているからだ。一方で、GSTは「結晶化温度が約160℃と低く、高温環境でPCRAMの利用が制限される」「融点が高く、相変化させる時に多くの電力を消費する」などの課題もあった。
研究グループはこれまで、さまざまな遷移金属カルコゲナイド相変化の挙動を調査してきた。今回の研究成果はこの過程で発見した。従来の二次元層状物質は「低い融点」と「高い結晶化温度」を両立させられなかった。ところが、NbTe4はこれまでと異なり、「低融点」かつ「高結晶化温度」を実現。その上、アモルファス相と結晶相の間で、可逆的に高速の相変化が生じることも確認した。
しかも、アモルファス相は結晶相の電気抵抗より小さいことが分かった。これは、アモルファス相内に存在するNbクラスター(Nb原子の集団)に起因している。また、アモルファス相と結晶相では、元素間の結合における配位数や化学結合様式が大きく異なっている。これは、アモルファス相が熱的に安定であることを示しているという。
NbTe4の融点は約450℃と低く、結晶化温度は約270℃と高い。これにより、従来材料と比べ動作エネルギーは約2桁も削減が可能である。10年間の保証温度は最大135℃で、データ書き換え時間は30ナノ秒と速い。
研究グループは、NbTe4を応用したPCRAMを実現するため、今後はメモリスイッチング性能(特にデータ書き換え耐久性)をさらに高める必要があり、メモリ素子構造の最適化や微細加工への対応が重要になると見ている。
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