通信ケーブル軽量化を実現する150℃対応のA2B向けインダクター、TDK:エンジンルームでの使用にも
TDKはインダクターの新製品「KLZ2012-Aシリーズ」を発表した。車載オーディオバス規格「A2B(Automotive Audio Bus)」のノイズ対策用途に向けたもので、動作温度範囲は−55〜+150℃。
TDKは2024年1月16日、積層チップインダクターの新製品「KLZ2012-Aシリーズ」を発表した。車載オーディオバス規格「A2B(Automotive Audio Bus)」のノイズ対策に向けたもので、保証温度は−55〜+150℃。
A2B用途で150℃対応のインダクターは、積層工法では「業界で初めて」(TDK)だという。
導電性樹脂で熱衝撃や機械的応力への抵抗を向上
A2Bはアナログ・デバイセズ(ADI)が提唱している車載オーディオバスの規格だ。UTP(非シールドツイストペアケーブル)を用いて数珠つなぎで各アプリケーションを接続できる。1対1で機器間を接続する従来の通信規格に比べ、ワイヤハーネスの使用量を大幅に削減し、軽量化することができる。TDKは既に125℃対応のA2B向けインダクター「MLZ2012-Aシリーズ」を製品化している。A2Bをオーディオ以外の通信にも利用したいという要求が増えてきたことから、TDKはさらなる高温環境でも利用できる製品として150℃対応のKLZ2012-Aシリーズを開発したという。具体的には、ホイールスピードセンサーや加速度計などへの使用を想定する。
最大150℃という高耐熱性は、端子電極に導電性樹脂を採用することで実現した。機械的応力や振動、熱変化による膨張/収縮の応力を樹脂層が緩和し、クラックなどの不具合を抑制するという。
差動信号インタフェースであるA2Bでは、ノード間でのばらつきを抑制する必要がある。使用する一対のインダクターのインダクタンス差が大きいと高調波スプリアスが発生し、ノイズ源となってしまう。そのためA2B用途のインダクターは、狭公差であることが求められる。KLZ2012-Aシリーズは、同一ロット内におけるインダクタンス公差±8%を実現している。
なお、KLZ2012-Aシリーズの大きさは2.00×1.25×1.25mm(2012サイズ)。巻線タイプの競合品(3.20×2.50×2.00mm、3225サイズ)と比較すると実装面積を68%削減できる。
今回発表した製品はインダクタンスが3.3μHの1種類で、今後は高インダクタンス品の開発や磁気飽和の改善によってKLZ2012-Aシリーズのラインアップを拡充していくという。
TDKは2024年1月からKLZ2012-Aシリーズの生産を開始している。生産数は月産500万個で、サンプル価格は1個あたり40円(税別)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- FM〜セルラー帯を1個でカバー、TDKが新ノイズフィルターを開発
TDKが、スマートフォンなどのオーディオライン向けの積層ノイズサプレッションフィルターを開発した。新開発の低ひずみフェライト材料を採用したことで、音声ひずみを大幅に低減。同時に広帯域対応も実現し、FM帯およびセルラー帯のノイズ対策を1個で可能となったという。 - 消費電力が一般品の半分&瞬停にも対応、TDKの産業向け新SSD詳細
TDKが、高速バスインタフェース規格「PCI Express(PCIe)」に同社として初めて対応した産業機器向けのM.2 2280タイプSSD「SNP1Aシリーズ」を開発した。信頼性や安定動作が重視される産業用途に特化する形で開発したという同製品の詳細を、TDKの担当者に聞いた。 - 従来比で40%小型化したAC-DC基板型電源、TDK
TDKは、TDKラムダブランドのAC-DC基板型電源「ZWS-Cシリーズ」を発表した。既存製品と比べて小型/軽量化を実現したもので、ファクトリーオートメーション(FA)やロボット、半導体製造装置や計測機器など、一般産業機器での使用を想定する。 - 従来比で30%の低背化、0.55mmのパワーインダクター
TDKは2023年10月26日、パワーインダクターの新製品「PLEA85シリーズ」を発表した。高さは0.55mmで、同様のサイズで金属磁性材料を用いたパワーインダクターの中では「業界最低背」(TDK)だという。 - 手袋でもぬれた手でも操作できる圧電スイッチ/センサー
TDKは「CEATEC 2023」(2023年10月17〜20日)に出展し、圧電スイッチ/センサーや自動車の利便性向上に貢献する技術、フルカラーレーザーモジュール搭載のAR(拡張現実)/VR(仮想現実)グラスなどを展示した。