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米CHIPS法の理想と現実 強まる「政治色」への懸念も台湾への過度な依存は改善できず?(2/2 ページ)

米国の半導体産業支援策である「CHIPS and Science Act」(CHIPS法)が、現実に直面し始めている。専門家は「CHIPS法の補助金は、台湾に対する米国の過度な依存を改善することはできないだろう」と述べている。2024年11月に米大統領選を控え、CHIPS法が政治的な困難に直面しているとみるアナリストもいる。

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Intelは「CHIPS Two」を要請

 Gelsinger氏は、2024年2月21日(米国時間)に開催したIntelのイベント「Intel Foundry Direct Connect 2024」において、商務省長官のGina Raimondo氏に対し、CHIPS法の後続となる「CHIPS Two」の支援を要請した。

Intel Foundry ServicesのDirect Connectイベントで登壇したSam Altman氏(右)とPat Gelsinger氏(撮影:EETimes/Nitin Dahad)
「Intel Foundry Direct Connect 2024」に登壇したSam Altman氏(右)と対談するPat Gelsinger氏(撮影:EETimes/Nitin Dahad)

 それに対してRaimondo氏は、「『CHIPS Two』でも別の名称でも構わないが、米国が世界をリードするためには、継続的な投資が必要だと考えている。われわれは大きな後れを取り、うまくいかなくなってしまった。米国はかつて、世界半導体の40%を国内製造していた。本当に世界で競争したいのであれば、投資を継続しなければならない」と述べている。

 アナリストによると、CPOは政治的な困難に直面しているのだという。

 TechInsightsのシニアリサーチフェローであるDan Hutcheson氏は、EE Timesのインタビューの中で、「米国政府は、世界の他のどの組織よりも慎重を期す必要がある。悪いことに、2024年の大統領選挙が近づいているために、通常よりも政治色が強くなっている」と述べる。

 TSMCとSamsungは、コメントを拒否した。

 Raimondo氏はIntelのイベントにおいて、「数週間以内に、補助金の追加を発表する予定だ」と述べている。

 Triolo氏は、「ホワイトハウスと商務省当局は、政治シーズンが本格化するに伴い、バイデン大統領が独自に上げた功績の一つを宣伝すべく、特に国内企業に向けた高額資金提供を発表するタイミングを検討したり、華々しいテープカットセレモニーなどのさまざまなイベントを模索したりしているところだ」と述べる。

 Triolo氏は、「選挙が近くなってから大規模な補助金を交付するというのが理想的だが、政府当局は、プログラム全体が厳しい逆風に直面しているように見えるのを避けるため、近いうちにそれを実行しなければならないだろう」と付け加えた。

台湾への過度な依存を改善するのは困難

 Triolo氏は「CHIPS法の補助金は、Raimondo氏が“国家安全保障上の重大な脆弱性”と呼ぶ、台湾に対する米国の過度な依存を改善することはできないだろう」と続ける。

 「仮に、全てがスケジュール通りに進行したとしても、2026〜2028年に稼働を開始する最先端プロセスの工場の生産能力は、米国の大手半導体メーカーが台湾に依存している製品全体のごく一部にすぎないだろう。台湾をめぐる軍事衝突の可能性は現在も、米国の国家/経済安全保障において非常に大きな脅威となっている」(Triolo氏)

 TSMCは最大顧客として、米国の半導体設計メーカーAppleやAMD、NVIDIAを抱えている。米国に拠点を置くIntelも、最先端シリコンの生産をTSMCに依存している。最近ではTSMCの他に、台湾UMC(United Microelectronics Corporation)もIntelのサプライヤーとなった。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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