STがマイコンに18nm FD-SOIプロセス採用へ、25年後半に量産へ:組み込み型相変化メモリ搭載
STMicroelectronicsが組み込み型相変化メモリ(ePCM)を搭載した18nm FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレータ)技術に基づく先進プロセスを開発した。新技術を採用したマイコンを、2025年後半に量産開始する予定だ。
STMicroelectronics(以下、ST)は2024年3月19日(スイス時間)、組み込み型相変化メモリ(ePCM)を搭載した18nm FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレータ)技術に基づく先進プロセスを、Samsung Foundryと共同開発したと発表した。既存技術と比べ大幅な性能向上や低消費電力化を実現するとともに、より大きなメモリ容量や高集積化が可能という。
STは、この新技術を採用した産業用アプリケーション向けの次世代「STM32」マイコンについて、2024年後半に一部の顧客向けにサンプル出荷を開始し、2025年後半には量産を開始する予定だ。
電力効率は50%以上向上
STは、現在同社が用いている40nm 組み込み不揮発性メモリ(eNVM)技術と比較し、新技術であるePCM搭載18nm FD-SOIプロセス技術は主要な性能指数を大幅に向上するとしている。
具体的にはまず、電力効率(性能対電力比)が50%以上向上するという。また、不揮発性メモリ(NVM)集積度が2.5倍向上することで、より大容量のオンチップメモリが可能になる。さらに、ロジック回路の集積度が3倍となることで、AI(人工知能)およびグラフィックスアクセラレーターなどのデジタルペリフェラルや最先端セキュリティおよび安全機能を統合可能な他、雑音指数は3dB改善され、ワイヤレスMCUのRF性能が向上するとしている。
また、同技術は3V動作が可能であり、電源管理、リセットシステム、クロックソース、デジタル/アナログコンバーターなどのアナログ機能を供給できる。STは「当社のPCM+FD-SOI技術は、20nm以下のプロセスで唯一3V動作を実現する技術だ」と述べている。
STはこの他、「堅牢な高温動作、放射線硬化、車載アプリケーションですでに実証済みのデータ保持機能によって、要求の厳しい産業用アプリケーションに必要な信頼性を提供する」などとしている。
STのマイクロコントローラー/デジタルIC/RF製品グループ担当プレジデントであるRemi El-Ouazzane氏は、「STは、半導体業界をリードするイノベーターとして、車載および航空宇宙アプリケーション向けのFD-SOIおよびPCM技術を開拓し、顧客に提供してきた。STは現在、次世代STM32マイコンを皮切りに、これらの技術の利点を産業用アプリケーションの開発者に提供するため、次のステップに進んでいる」と述べている。
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