動作電圧3Vを実現した、昇圧型スイッチングレギュレーターコントローラー:低電圧対応と低消費電力を両立
エイブリックは2024年3月26日、3Vと低い動作電圧を実現した車載用昇圧型スイッチングレギュレーターコントローラー「S-19990/S-19999シリーズ」を発表した。バックアップキャパシターやバッテリーの低電圧化、小型化などに貢献する。
エイブリックは2024年3月26日、「業界最小」(同社)とする3V動作を実現した車載用の昇圧型スイッチングレギュレーターコントローラー「S-19990/S-19999シリーズ」を発表した。電圧の低いキャパシターやバッテリーからでも昇圧が可能なため、バックアップ電源の低コスト化や小型化などに貢献する。
S-19990シリーズは、静止時消費電流が60μAと低いため、暗電流の低減に貢献する。また、出力電圧から内部回路に電源を供給する「ブートストラップ構成」を採用することで、起動後に3.0V未満の低い入力電圧を昇圧することができる。アプリケーションは、電動ドアラッチやe-Call、LEDなどを想定している。
S-19999シリーズは、出力電圧を監視し自動で昇圧動作を制御する「スタートストップ機能」を搭載している。これにより、出力電圧がウェイクアップ電圧より高いときはスリープモードで動作し、ウェイクアップ電圧を下回ると昇圧動作を実行する。
また、電圧帰還抵抗回路を内蔵していて、スリープモードでは電圧帰還抵抗回路の電流パスを遮断するため、暗電流をさらに削減する。静止時消費電流が70μAで、スリープモード時の消費電流は60μAだ。アプリケーションは、クラッキング対策やスタートストップシステム、各種ECU(電子制御ユニット)を想定している。
S-19990/S-19999シリーズは、発振周波数を400kHz/2.2MHzの2種類から選択できる。発振周波数を変調させることで、特定の周波数に発生するノイズピークを抑える「スペクトラム拡散型発振回路」を内蔵しているため、昇圧回路が発する伝導ノイズおよび放射ノイズを軽減する。
パッケージは、アウターリードタイプの「HSNT-8(2030)(3.0×2.0×0.5mm)」と、ガルウイングタイプの「HTMSO-8(4.0×2.9×0.8mm)」を用意している。
エイブリック担当者は、「S-19990/S-19999シリーズは、当社が初めて提供する車載用の昇圧型スイッチングレギュレーターコントローラーだ。降圧型DC-DCコンバーターで培ったアナログ技術を応用することで、低電圧対応と低消費電力を実現した。バックアップ電源を減らしたい人には、ぜひ一度試してもらいたい」と語った。
既に提供を開始していて、サンプル価格は、S-19990シリーズが190円(税抜)、S-19999シリーズが210円(税抜)だ。販売目標は、2029年(単年)で500万個とする。
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